ニューヨークの古本屋 〈2018年3月編〉

もう1ヶ月以上経ってしまって、記憶も曖昧になりつつあるが、3月にニューヨークに行った際に訪れた古書店をまとめておく。
このブログ、一応パンクス向けの記事が多いし、もちろんパンクスが読むであろうと想定して書いてるつもりなんだが、前にも書いたように、検索でここにやってくるので1番多いのは、イスラエルの入出国の記事。あとはエルサレムの古書店とか、那覇の古書店など、ある種実用的な記事しか読まれてない(最近google analyticsがちゃんと動いていないので、検索の内訳がわかんなくて困ってるんだけど。T君(このブログのサーバの持ち主)、何とかして!)っぽいので、まあニューヨークのについても書いておこうと。

ただニューヨークは、ジェントリフィケーションなどもあって家賃は高騰、ヒップな地域がどんどん移り変わったりするせいで、店の移り変わりも早そうなので、以下の店がいつまであるかは知らないし、同じ場所でも経営者が変わって名前を変えるとか、いろんなことは想定されるので、ググってここにたどり着いたひとは最新の情報をチェックしてください。

傾向としては、やはりブロードウェイや映画・テレビ産業などの中心地でもあるからなのか、どの店もフィクションや演劇、詩の本の取り扱いが多いのと、店内で朗読会などのイベントをやってるところも多そうだった。

〈マンハッタン〉

Strand Bookstore
Strand bookstore
ニューヨークの老舗大型古書店。新本も売ってる。店の外の「エサ箱」的1ドル本がかなり充実してるとakが言ってたので行ってみたが、エサ箱にはえらい人だかりで、おまけにメチャクチャ寒いのでササっと見て店内へ。4フロアあるのか、とにかく在庫は多い。新本の面陳のように、同じ古書を10冊も積んで売ってるって、商品の回転が早くないとなかなかできないよな。こっちの人は新刊本は読んだら値が高いうちに古書店に売っ払うんだろうか。
地下には最近猛烈に流行ってるらしいタロットやオカルトのコーナーがあって、そこにお香の一つとして毎日香が売ってたが、向こうの毎日香には何かウーウー的意味があるんだろうか。
ここでは文庫版みたいな扱いの、Bantam Classics版のシャーロット・ブロンテの“Villette”を新本で購入。5.35ドル。新本でも10%オフ。でもニューヨークはSales Tax(消費税みたいなの)が8.875%と高いのであった。
住所:828 Broadway, New York
https://www.strandbooks.com/

Mercer Books & Records
Mercer st. bookstore
グリニッチヴィレッジのニューヨーク大学一帯の南側ら辺にある、オールドスクールな古本屋。後からブルックリンのきれい目な古本屋にいくつか行って思ったが、こういった古くて雑然として、カテゴリも適当に分けてある古本屋の方が、古本屋然としていて、何かと出会える感が高いし、値段も安いし、お店は爺さんひとりでやってるぽくて好感が持てる。こっちは古本屋に限らず、どこでも何でも大体カード決済が可能で楽だが、そのカード読み取りも、最近多くのお店が使ってるらしい「Square」というカード決済アプリ(iPadなんかにリーダー(端末)をつけて、それでカードを読み取って、レシートはメールで受け取る。便利は便利なんだけど)だとあまりにモダンすぎて味気ないので、やっぱり調子の悪いカードマシーンがあって、カードを何回もスライドさせて、汚いボタンで暗証番号打つ方がいいよね。まあ単にそういったヒップな決済システムがちょっと嫌なだけなんだけど。
さて、この店はレコードもちょっと売ってて、リチャード・プライヤーが自分で撮った自伝映画『ジョ・ジョ・ダンサー』のサントラが売ってたので購入。6ドルだったか。
ホームページを見ると、もう25年もやってるのね。この25年でこの地域の家賃はどれくらい上がったんだろう。
住所:206 Mercer St, New York
http://www.mercerstreetbooks.com/

Codex
Codex
ここは下記ブルックリンのBook Thug Nationの関連店なのか、そのSquare経由で受け取ったレシートの差出人がBTNだった。
いかにも最近風な、オシャレでスッキリした店内に、フィクションやアート系の本がたくさん陳列してある。地面に本を置く、なんていう、日本の古本屋じゃ当たり前過ぎて何も思わないようなことは行われておらず(笑)、きれいすぎてこちらが恐縮するくらいだ。隣のカフェとは店内で繋がってるのもオシャレポイントが高い(私的にはマイナスポイントだが)。
シャーリイ・ジャクスンの“Raising Demons”(『野蛮人との生活』(ハヤカワ文庫)は冷徹な観察眼で家族を見るノンフィクションで、小説以上にすげー面白いから、これも邦訳出たらいいのに)と、チャールズ・ウィリアムズの“War in Heaven”を購入。さて、ちゃんと読めるだろうか…。そういやどっちも国書刊行会の「ドーキーアーカイヴ」に入ってる作家だな。『ライオンの場所』早く読みたいよ。
住所:1 Bleecker St, New York
http://codexbooks.info/

BOOKOFF 49 W 45th NY
昔パリのブックオフに行ったら、結構いろんな物があって(以前書いたが、早逝した詩人の安川奈緒氏に宛てた雑誌の献本なんかも売っていた)、ちょっと期待して行ったんだが、汚いDVDがたくさんと、楽器やPC機器のようなハードオフ扱いの製品、あとアメリカのアニメオタク向けなのか、そういった関係のものが多くて、特に目ぼしいものもなし。がっかりしたから写真撮るのも忘れちゃったよ。
住所:49 West 45th Street New York

〈ブルックリン〉

Book Thug Nation
bookthugnation
ここはブルックリンのジェントリフィケーション中心エリア、ウィリアムズバーグにある。メトロだとLトレインのBedford Ave駅が最寄り。
ここも綺麗な古書店で、いかにもと言ったら失礼だが、ジェントリファイドされた後にできました、という感じはする。地面に本を置かないのは、先述のCodexと同じ系列だから、きっとここのポリシーなんだろう。地面を這うようにして、何かよくわからないけどひたすら本を探す行為というのも好きなんだが、それはおあずけというか、そういうことをさせない雰囲気のお店。
コミュニティ・スペースとも書いてあったので、集会やイベントも行われているようだ。今回ウィリアムズバーグにはここ以外行かなかったので、何がどれくらい「高級化」してるかはよくわからないのだが、ブルックリンの中でも何か「きれい」だな、というのは少し道を歩けばわかる。イーストリバー沿いには変なデザインのハイライズが立ち並び、もう南千住駅の東側みたいになっている(地価はまったく比較できないだろうが)。そういえば駅からここまでの間に、きれいな店構えのアート専門の書店があった。そっちにはお客さんもたくさんいた。
さて、このサグな店では、ジョン・ウォーターズの自伝“Role Models”を安く購入。あとDaniel Makagonという人の、アメリカのアンダーグラウンド・パンクの本も買った。90年代の話かと思ってよく見ずに買ったんだが、2015年出版でわりと新し目のバンドのことも載っている。
住所:100 N 3rd St, Brooklyn, NY
http://www.bookthugnation.com/

Better Read Than Dead
better read than dead bushwick
ここは、EL ZINE編集Y氏に教えてもらった、ブッシュウィックの「パンク小道」を目当てに行ったんだが、平日の昼間に行ったからなのか、もう今はそこは何もないのか知らないが、このお店しかやっていなかった。細長い形の店舗で、外のエサ箱にはSFのペーパーバック(ひたすらアシモフとか)と、文字通りの箱には色あせたMaximum Rocknrollの90年代のバックナンバーが1冊2ドルで売っている。ちょっと期待しながら中へ入ったら、今のMRRも売ってたので、パンク小道にあるパンク人脈の本屋なのだろう。店員のあんちゃんは真面目そうな人だ。狭い店内はほとんどフィクションと詩の本だけ。ここではトマス・ディッシュの未邦訳の長編のハードカバー1冊と、スターリンのインタビューが載ってるMRRの92年10月号を購入。ディッシュたくさんあったな。あとセリーヌもたくさんあった。ニューヨークの古本屋にはセリーヌが多い! というのは今回気付いたことのひとつ。アメリカではどこまで発禁になっているか知らないが、日本で文庫本で出てる代表作2作に加え、『北』、『城から城』、“London Bridge”は結構よく見かけた。
しかしこんな狭い店で、必然的に在庫もそんなに置く場所もなく、これでやっていけるのだろうかとちょっと心配にもなる。「どう? やっていけてるかい?」と聞くわけにもいかんしねぇ。もっと買えたらよかったんだが、本は重いからねぇ。

これがその「パンク小道」の現在。左手がその本屋。ね、何もやってないでしょ。

これがその「パンク小道」の現在。左手前がその本屋。ね、何もやってないでしょ。


住所:867 Broadway, Brooklyn

Human Relations
Human relations bushwick
上のBetter Read Than Deadのあんちゃんに、この辺に他に古本屋はある?と聞いたら教えてくれたのがこのお店。実はその前に行っていたレコード屋、Material Worldの対面にあるのだった。ブッシュウィックの建設中の大型マンションを見ながら、Flushing Aveを往復したことになる。ちょっと疲れたな。
ここはわりと大きめの店で、フィクション以外にもコミックやアートの本、ニューヨークではもう珍しくすら感じる、大きめのノンフィクションのコーナーもあった。Material Worldで買ったレコードが入った赤い袋を持ってると、素敵な笑顔の店員のおじさんが「何買ったの?見せてよ」と話しかけてきたので仕方なく見せたところ、「へー、知らないなあ」という不毛な会話をしたあと、あのレコード屋いいよね、俺も昨日行ったんだよ、これ買ったんだ、聞く? と会話が続く。やぱりMaterial Worldはメタル、パンク向けだけのレコード屋じゃないんだな(このあたりはEL ZINE vol.30の拙稿「ニューヨーク2018」を参照いただきたい)。
というわけで、気さくな店員のおじさんがいて、お客さんも結構たくさんいて繁盛してそうなこのお店では、オクタヴィア・バトラーの長編などを購入。ここもSquareで決済。
住所:1067 Flushing Ave, Brooklyn
http://www.humanrelationsbooks.com/

Unnameable Books
(写真撮るの忘れた)
ブルックリンで数日滞在させてもらった、akの友人の家からほど近いところにあったプロスペクトハイツのど真ん中のお店。このあたり、子供向けの本専門店、ってのがいくつかあるようで、このお店にも絵本がたくさん置いてあったので、子育てファミリーが多いエリアなのかな。
ここはフィクションは他のお店よりは少なめ、子供用の本の他にも、「LGBT」の棚、Black Studiesの棚などもあり、多分古くからやってるお店なんだろう。ここに来て、新しいお店=フィクションの割合が多い、ということが段々わかってきたぞ。現にここのカード決済は、Squareじゃなくてちゃんとしたカードリーダーでボタン押すタイプだった。私の好きな類の古本屋だ。
ここではBrian Evensonの長編1冊などを購入。Brian Evensonは結構な多作の作家だが、いつも洋書で買ったやつを読み切らないうちに、それの邦訳が出る。私の選択が悪いのだろうか、センスがいいのだろうか、短編集だからだろうか、それは知らない。で、邦訳が出ると洋書を読むのが億劫になり、でも邦訳を買うのも何だかもったいないので、結局読み進められない、というジレンマに陥るが、今回は邦訳出る前に読み終えられるのだろうか。
あとクラスナホルカイ・ラースローの、わりと最近英訳が出たらしい“Seiobo There Below”を買おうか迷ったが、中をチラ見すると、相変わらず改行がなく文章が延々と続いているので、こんなの読むのに何年かかるんだと思い諦めた。英訳からの重訳でいいので、誰か邦訳してください! 他の作品もね! 『北は山、南は湖…』(松籟社)はそんなに面白くないんだよな…。
住所:600 Vanderbilt Ave, Brooklyn
http://unnameablebooks.blogspot.jp/

というわけでブックオフも入れて8店。しかし、重要なことは、買った本はちゃんと読まないと、ということだ…。
レコードに比べて本は単価がかなり安いので、Better Read Than Deadのように、やっていけてるのか心配になるお店もあるが、まあこればかりは仕方ない。特にニューヨークでやるなんて相当に大変なのは覚悟の上でやってるんだろう。日本でも最近はブックカフェとか、古書店で朗読や弾き語りイベントなんかをやってるところもあるが、そうやってコミュニティの中で活用される場としても、古本屋を機能させているようだし。ただ本を売る、というのはもうネットで事足りてしまうから、それ以上の何か、“Human Relations”という名を冠したお店が示すように、人と人をつなげる場に、古本屋の意義も変わってきているのかもしれない。今までインフォショップが担ってきたことを、古本屋もやるようになったということか。そういや今回は古本屋に気を取られて、インフォショップとか、ラディカル本屋的なところには行かなかったな。以前サンフランシスコにはあったが、ラディカル本屋がやってる古本屋ってのもニューヨークにはなさそうだった。

24. April 2018 by sats
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