ロケ地、『ポゼッション』

テーマを少し変えてみた。昔の記事に誤表示等あったらお許しを。

さて、まだ旅の話でひっぱる。映画を見ない人にとってはどうでもいい話かもしれないので、興味のない方はごめんなさい。

人と「一番狂った映画は何か?」という話をする時に、私はポーランドの映画監督アンジェイ・ズラウスキーの『ポゼッション』の名前を出すことがある(話す相手にもよるが)。
その内容は観てもらえればわかると思うが何とも説明が難しく、躁鬱を上下する、と言うよりも、夫婦間のストレスのようなものを極限まで受けて自らのバランスを失い、そのバランスを整えるために不倫、しかも脳内での不倫を具現化するイザベル・アジャーニを観るたびにこちらはわけがわからなくなり、そんな妻を何とかしたい、と言うよりも、それでも自分のものにしたいという所有願望がまた自らを狂わせていく夫サム・ニールを見ていても、それは映画全体を理解したとは到底思えない。夫婦の仲はそのまま世界の調和なのか、一個人の中での善と悪の戦争は想像の怪物を産み得るのか。当時の共産主義と資本主義の拮抗は制御できない無秩序をもたらしたのか。

そんなことを印象に残しながらも細かいシーンや風景はすっかり頭の中から消え去っていたが、あの映画がベルリンで撮られていたということは覚えていたので、ベルリン滞在時にネットであの住所を探し出し行ってみることにした。そう、あのイザベル・アジャーニとまぐわっていた、ぬめぬめした蛸のような怪物がいた87, Sebastianstraßeである。駅はUバーンのモーリッツプラッツ駅の近く。

と意気込んで行ってみたものの、実際にその住所に行ってみると本当にここだったのだろうかと疑問に思い、何か釈然としない気持ちでもあった。先述のように、もちろん映画のシーンをちゃんと覚えていないのもあった。


帰国後映画を観返したところ、なるほど、あの建物の目の前にはベルリンの壁があったので景色としては全然違う。建物自体も綺麗に塗り替えられたのか、映画自体があまりに陰鬱だったのでまったく違った印象に見えたのか、はたまた私の記憶力と勘がただ悪いだけか。今は建物の1階にはカフェのような店が入っていた。3枚目の写真でちゃんと壁の跡が残っているのがわかる。地下鉄駅から歩いてきた場合、映画の中では壁で細くなっている方(画面の向こう側)から来ることになるわけである。
このロケーションというのも、ベルリンの西側の果て、壁を越えれば東側という、共産陣営と資本主義陣営のはざまで自滅していくアジャーニのことを考えれば重要だったのかもしれない。

ロケ地巡りはその映画の追体験をするようで純粋に楽しいが、ちゃんと忘れずにその映画の特定のシーンを覚えておく必要がある。これがなかなか難しい。覚えておかないと今回みたいにいざ現地に行っても何か腑に落ちない気持ちになる。ただ自分の生活圏にそれがあれば覚えられるのかもしれない。実際私の地元・岐阜でよく通る堤防道路は、三角マーク東映の「将軍」・山下耕作がヤクザ社会の在日朝鮮人を描いた佳作、『日本暴力列島 京阪神殺しの軍団』で登場し、いつもそこを通るたびに、その後のシーンで長良川の川原で白い布に包まれながら死んでいった梅宮辰夫を思い出す。

フィルムツーリズムという言葉もあるが、ロケ地巡りだけで世界を回る、というのはひとつの至福だろう。そんな旅も悪くなさそうである。

87, Sebastianstraßeの地図。ストリートビューで建物の色と雰囲気を見ると違いがよくわかる。何だ、ストリートビューだけでもロケ地巡りができるじゃないか。

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02. December 2012 by sats
Categories: films, germany | Tags: , , , , , , , , , , | Leave a comment

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