ニューヨークの古本屋 〈2018年3月編〉

もう1ヶ月以上経ってしまって、記憶も曖昧になりつつあるが、3月にニューヨークに行った際に訪れた古書店をまとめておく。
このブログ、一応パンクス向けの記事が多いし、もちろんパンクスが読むであろうと想定して書いてるつもりなんだが、前にも書いたように、検索でここにやってくる人には、イスラエルの入出国の記事。あとはエルサレムの古書店とか、那覇の古書店など、ある種実用的な記事しか読まれてない(最近google analyticsがちゃんと動いていないので、検索の内訳がわかんなくて困ってるんだけど。T君(このブログのサーバの持ち主)、何とかして!)っぽいので、まあニューヨークのについても書いておこうと。

ただニューヨークは、ジェントリフィケーションなどもあって家賃は高騰、ヒップな地域がどんどん移り変わったりするせいで、店の移り変わりも早そうなので、以下の店がいつまであるかは知らないし、同じ場所でも経営者が変わって名前を変えるとか、いろんなことは想定されるので、ググってここにたどり着いたひとは最新の情報をチェックしてください。

傾向としては、やはりブロードウェイや映画・テレビ産業などの中心地でもあるからなのか、どの店もフィクションや演劇、詩の本の取り扱いが多いのと、店内で朗読会などのイベントをやってるところも多そうだった。

〈マンハッタン〉

Strand Bookstore
Strand bookstore
ニューヨークの老舗大型古書店。新本も売ってる。店の外の「エサ箱」的1ドル本がかなり充実してるとakが言ってたので行ってみたが、エサ箱にはえらい人だかりで、おまけにメチャクチャ寒いのでササっと見て店内へ。4フロアあるのか、とにかく在庫は多い。新本の面陳のように、同じ古書を10冊も積んで売ってるって、商品の回転が早くないとなかなかできないよな。こっちの人は新刊本は読んだら値が高いうちに古書店に売っ払うんだろうか。
地下には最近猛烈に流行ってるらしいタロットやオカルトのコーナーがあって、そこにお香の一つとして毎日香が売ってたが、向こうの毎日香には何かウーウー的意味があるんだろうか。
ここでは文庫版みたいな扱いの、Bantam Classics版のシャーロット・ブロンテの“Villette”を新本で購入。5.35ドル。新本でも10%オフ。でもニューヨークはSales Tax(消費税みたいなの)が8.875%と高いのであった。
住所:828 Broadway, New York
https://www.strandbooks.com/

Mercer Books & Records
Mercer st. bookstore
グリニッチヴィレッジのニューヨーク大学一帯の南側ら辺にある、オールドスクールな古本屋。後からブルックリンのきれい目な古本屋にいくつか行って思ったが、こういった古くて雑然として、カテゴリも適当に分けてある古本屋の方が、古本屋然としていて、何かと出会える感が高いし、値段も安いし、お店は爺さんひとりでやってるぽくて好感が持てる。こっちは古本屋に限らず、どこでも何でも大体カード決済が可能で楽だが、そのカード読み取りも、最近多くのお店が使ってるらしい「Square」というカード決済アプリ(iPadなんかにリーダー(端末)をつけて、それでカードを読み取って、レシートはメールで受け取る。便利は便利なんだけど)だとあまりにモダンすぎて味気ないので、やっぱり調子の悪いカードマシーンがあって、カードを何回もスライドさせて、汚いボタンで暗証番号打つ方がいいよね。まあ単にそういったヒップな決済システムがちょっと嫌なだけなんだけど。
さて、この店はレコードもちょっと売ってて、リチャード・プライヤーが自分で撮った自伝映画『ジョ・ジョ・ダンサー』のサントラが売ってたので購入。6ドルだったか。
ホームページを見ると、もう25年もやってるのね。この25年でこの地域の家賃はどれくらい上がったんだろう。
住所:206 Mercer St, New York
http://www.mercerstreetbooks.com/

Codex
Codex
ここは下記ブルックリンのBook Thug Nationの関連店なのか、そのSquare経由で受け取ったレシートの差出人がBTNだった。
いかにも最近風な、オシャレでスッキリした店内に、フィクションやアート系の本がたくさん陳列してある。地面に本を置く、なんていう、日本の古本屋じゃ当たり前過ぎて何も思わないようなことは行われておらず(笑)、きれいすぎてこちらが恐縮するくらいだ。隣のカフェとは店内で繋がってるのもオシャレポイントが高い(私的にはマイナスポイントだが)。
シャーリイ・ジャクスンの“Raising Demons”(『野蛮人との生活』(ハヤカワ文庫)は冷徹な観察眼で家族を見るノンフィクションで、小説以上にすげー面白いから、これも邦訳出たらいいのに)と、チャールズ・ウィリアムズの“War in Heaven”を購入。さて、ちゃんと読めるだろうか…。そういやどっちも国書刊行会の「ドーキーアーカイヴ」に入ってる作家だな。『ライオンの場所』早く読みたいよ。
住所:1 Bleecker St, New York
http://codexbooks.info/

BOOKOFF 49 W 45th NY
昔パリのブックオフに行ったら、結構いろんな物があって(以前書いたが、早逝した詩人の安川奈緒氏に宛てた雑誌の献本なんかも売っていた)、ちょっと期待して行ったんだが、汚いDVDがたくさんと、楽器やPC機器のようなハードオフ扱いの製品、あとアメリカのアニメオタク向けなのか、そういった関係のものが多くて、特に目ぼしいものもなし。がっかりしたから写真撮るのも忘れちゃったよ。
住所:49 West 45th Street New York

〈ブルックリン〉

Book Thug Nation
bookthugnation
ここはブルックリンのジェントリフィケーション中心エリア、ウィリアムズバーグにある。メトロだとLトレインのBedford Ave駅が最寄り。
ここも綺麗な古書店で、いかにもと言ったら失礼だが、ジェントリファイドされた後にできました、という感じはする。地面に本を置かないのは、先述のCodexと同じ系列だから、きっとここのポリシーなんだろう。地面を這うようにして、何かよくわからないけどひたすら本を探す行為というのも好きなんだが、それはおあずけというか、そういうことをさせない雰囲気のお店。
コミュニティ・スペースとも書いてあったので、集会やイベントも行われているようだ。今回ウィリアムズバーグにはここ以外行かなかったので、何がどれくらい「高級化」してるかはよくわからないのだが、ブルックリンの中でも何か「きれい」だな、というのは少し道を歩けばわかる。イーストリバー沿いには変なデザインのハイライズが立ち並び、もう南千住駅の東側みたいになっている(地価はまったく比較できないだろうが)。そういえば駅からここまでの間に、きれいな店構えのアート専門の書店があった。そっちにはお客さんもたくさんいた。
さて、このサグな店では、ジョン・ウォーターズの自伝“Role Models”を安く購入。あとDaniel Makagonという人の、アメリカのアンダーグラウンド・パンクの本も買った。90年代の話かと思ってよく見ずに買ったんだが、2015年出版でわりと新し目のバンドのことも載っている。
住所:100 N 3rd St, Brooklyn, NY
http://www.bookthugnation.com/

Better Read Than Dead
better read than dead bushwick
ここは、EL ZINE編集Y氏に教えてもらった、ブッシュウィックの「パンク小道」を目当てに行ったんだが、平日の昼間に行ったからなのか、もう今はそこは何もないのか知らないが、このお店しかやっていなかった。細長い形の店舗で、外のエサ箱にはSFのペーパーバック(ひたすらアシモフとか)と、文字通りの箱には色あせたMaximum Rocknrollの90年代のバックナンバーが1冊2ドルで売っている。ちょっと期待しながら中へ入ったら、今のMRRも売ってたので、パンク小道にあるパンク人脈の本屋なのだろう。店員のあんちゃんは真面目そうな人だ。狭い店内はほとんどフィクションと詩の本だけ。ここではトマス・ディッシュの未邦訳の長編のハードカバー1冊と、スターリンのインタビューが載ってるMRRの92年10月号を購入。ディッシュたくさんあったな。あとセリーヌもたくさんあった。ニューヨークの古本屋にはセリーヌが多い! というのは今回気付いたことのひとつ。アメリカではどこまで発禁になっているか知らないが、日本で文庫本で出てる代表作2作に加え、『北』、『城から城』、“London Bridge”は結構よく見かけた。
しかしこんな狭い店で、必然的に在庫もそんなに置く場所もなく、これでやっていけるのだろうかとちょっと心配にもなる。「どう? やっていけてるかい?」と聞くわけにもいかんしねぇ。もっと買えたらよかったんだが、本は重いからねぇ。

これがその「パンク小道」の現在。左手がその本屋。ね、何もやってないでしょ。

これがその「パンク小道」の現在。左手前がその本屋。ね、何もやってないでしょ。


住所:867 Broadway, Brooklyn

Human Relations
Human relations bushwick
上のBetter Read Than Deadのあんちゃんに、この辺に他に古本屋はある?と聞いたら教えてくれたのがこのお店。実はその前に行っていたレコード屋、Material Worldの対面にあるのだった。ブッシュウィックの建設中の大型マンションを見ながら、Flushing Aveを往復したことになる。ちょっと疲れたな。
ここはわりと大きめの店で、フィクション以外にもコミックやアートの本、ニューヨークではもう珍しくすら感じる、大きめのノンフィクションのコーナーもあった。Material Worldで買ったレコードが入った赤い袋を持ってると、素敵な笑顔の店員のおじさんが「何買ったの?見せてよ」と話しかけてきたので仕方なく見せたところ、「へー、知らないなあ」という不毛な会話をしたあと、あのレコード屋いいよね、俺も昨日行ったんだよ、これ買ったんだ、聞く? と会話が続く。やぱりMaterial Worldはメタル、パンク向けだけのレコード屋じゃないんだな(このあたりはEL ZINE vol.30の拙稿「ニューヨーク2018」を参照いただきたい)。
というわけで、気さくな店員のおじさんがいて、お客さんも結構たくさんいて繁盛してそうなこのお店では、オクタヴィア・バトラーの長編などを購入。ここもSquareで決済。
住所:1067 Flushing Ave, Brooklyn
http://www.humanrelationsbooks.com/

Unnameable Books
(写真撮るの忘れた)
ブルックリンで数日滞在させてもらった、akの友人の家からほど近いところにあったプロスペクトハイツのど真ん中のお店。このあたり、子供向けの本専門店、ってのがいくつかあるようで、このお店にも絵本がたくさん置いてあったので、子育てファミリーが多いエリアなのかな。
ここはフィクションは他のお店よりは少なめ、子供用の本の他にも、「LGBT」の棚、Black Studiesの棚などもあり、多分古くからやってるお店なんだろう。ここに来て、新しいお店=フィクションの割合が多い、ということが段々わかってきたぞ。現にここのカード決済は、Squareじゃなくてちゃんとしたカードリーダーでボタン押すタイプだった。私の好きな類の古本屋だ。
ここではBrian Evensonの長編1冊などを購入。Brian Evensonは結構な多作の作家だが、いつも洋書で買ったやつを読み切らないうちに、それの邦訳が出る。私の選択が悪いのだろうか、センスがいいのだろうか、短編集だからだろうか、それは知らない。で、邦訳が出ると洋書を読むのが億劫になり、でも邦訳を買うのも何だかもったいないので、結局読み進められない、というジレンマに陥るが、今回は邦訳出る前に読み終えられるのだろうか。
あとクラスナホルカイ・ラースローの、わりと最近英訳が出たらしい“Seiobo There Below”を買おうか迷ったが、中をチラ見すると、相変わらず改行がなく文章が延々と続いているので、こんなの読むのに何年かかるんだと思い諦めた。英訳からの重訳でいいので、誰か邦訳してください! 他の作品もね! 『北は山、南は湖…』(松籟社)はそんなに面白くないんだよな…。
住所:600 Vanderbilt Ave, Brooklyn
http://unnameablebooks.blogspot.jp/

というわけでブックオフも入れて8店。しかし、重要なことは、買った本はちゃんと読まないと、ということだ…。
レコードに比べて本は単価がかなり安いので、Better Read Than Deadのように、やっていけてるのか心配になるお店もあるが、まあこればかりは仕方ない。特にニューヨークでやるなんて相当に大変なのは覚悟の上でやってるんだろう。日本でも最近はブックカフェとか、古書店で朗読や弾き語りイベントなんかをやってるところもあるが、そうやってコミュニティの中で活用される場としても、古本屋を機能させているようだし。ただ本を売る、というのはもうネットで事足りてしまうから、それ以上の何か、“Human Relations”という名を冠したお店が示すように、人と人をつなげる場に、古本屋の意義も変わってきているのかもしれない。今までインフォショップが担ってきたことを、古本屋もやるようになったということか。そういや今回は古本屋に気を取られて、インフォショップとか、ラディカル本屋的なところには行かなかったな。以前サンフランシスコにはあったが、ラディカル本屋がやってる古本屋ってのもニューヨークにはなさそうだった。

24. April 2018 by sats
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EL ZINE vol.30 -SEX MESSIAH インタビュー/ ニューヨーク2018〈前編〉

EL ZINE vol.30は4月27日発売です。

今回は、大阪のブラックメタルバンド、SEX MESSIAHの首謀者で、その他も色々な音楽活動をされているMOENOS氏にインタビューしました。
パンクス視点で、「ブラックメタル」への疑問なども思い切って聞いてみましたが、氏の音楽に対する真摯な姿勢がそのまま回答に出ている、パンクスにとってもメタルヘッズにとっても読み応え十分の内容だと思います。またこういったアンダーグラウンドのシーンで「女性がバンドをやること」についても、ズバっと言い切ってもらってるので、ぜひご一読を。
↓の昨年のブラジルツアーの話もあり!

Better read than dead
あと今号にはもうひとつ寄稿してまして、先月半ばに行ってきたニューヨークの、ハードコア・パンク関連のことについての紀行文(の前半)を載せてもらっています。名付けて「ニューヨーク2018」…、記事タイトルのデザインも、ジョン・カーペンターのあれから拝借してもらったので、安直なタイトルですがご勘弁ください(笑)。
前編はとりあえず、ニューヨークのレコード屋のことや見たライブのこと、ニューヨーク・ハードコア・パンク的「名所」の現在などについて書いてます。vol.31に掲載予定の後編は、ニューヨークの「歴史ある」ジェントリフィケーションのことなどが主に載ります。
記事中に登場するバンドや施設などのリンクをここに貼っておくので、興味があればどうぞ。

↓のライブに行ったのでした。
show 0316
SPIC

RUBBER

YOUTH CRUSHER(ギリシャ)

Μάτι

The Museum of reclaimed Urban space (元C-Squat)
http://www.morusnyc.org/

ABC No Rio(再建中)
http://www.abcnorio.org/

元CBGBの場所にある高級服屋…
https://www.johnvarvatos.com/storedetails?StoreID=3008


ez30
EL ZINE / vol.30

●SKITKLASS
(2017年に突如として日本のハードコア・パンク・シーンに登場し、立て続けにリリースされた音源はいずれも即完売。正体不明の覆面バンド、SKITKLASSのヴォーカリストであるSkitkatt氏へのインタヴュー)

●OBEDIENCIA
(ロンドンのLa Vida Es Un Musからのアルバム・リリースも記憶に新しい、スペインはマドリッドの女性ヴォーカル・パンク・ロック・バンド、OBEDIENCIAへのインタヴュー)

●SOLVENT COBALT
(ex.ISTERISMOのSatoshi氏が率いる新バンド、SOLVENT COBALTへのインタヴューby Shogo氏/GREAT DANCE,ALTERNATIVE SOLUTION)

●Umea Punk City
(ex.AC4~現ACID BLOODのKarlによる、スウェーデンUmeaの現地情報コラム)

●Moenos from SEX MESSIAH
(大阪のブラック・メタル・バンドSEX MESSIAHのMoenos氏へのインタヴューby鈴木智士氏)

●SOW THREAT
(1stフル・アルバムのリリースを控える沖縄のステンチ・クラスト・バンド、SOW THREATのベース・ヴォーカルであるハチマン氏へのインタヴュー)

●沖縄バンド紹介
(沖縄で現在活動中の5バンド[ALKSLK、BIRDHELMS、疾shitva刃、offseason、R.A.G.S]へのミニ・インタヴュー)

●チヒロンfrom黄金狂時代
(東京のパンク・ロック・バンド、黄金狂時代のベーシストであるチヒロン氏へのインタヴューbyツトム氏/悲観レーベル)

●高松ハードコア特集
(・80年代の香川県高松市にCHAOS UKやJohnny Thundersなどを招聘し、様々なイヴェントを企画していた堀地氏と、ex.EFFIGY~AXEWIELDにして現在はULCERで活動中の増田氏による、高松の80年代についての対談。
・OFF-ENDの荒木氏、AKKA~DEMESNEのハナ氏、UNGODLYのガイ氏、IMPULSE RECORDS etcの井川氏による現在~未来の高松についての対談。
・高松で活動中の20バンドを紹介するテキスト)

●OHYDA
(ex.ALERT! ALERT!~KNIFE IN THE LEGのメンバーらによるポーランドのハードコア・バンド、OHYDAへのインタヴュー)

●LASHING SPEED DEMONS:MOTORHEAD/Fast Eddie Clarke Era
(2018年1月10日に亡くなったFast Eddie Clarkeが在籍していた、1976~82年までの”黄金トリオ”期のMOTORHEADについてby 大越よしはる氏)

●ASCO
(ブラジルはサントスのハードコア・バンド、ASCOへのインタヴューby Rafael Yaekashi)

●ニューヨーク2018
(2018年3月にニューヨークを旅してきた鈴木智士氏による紀行文、その前編)

●ES GIBT KEIN WERT
(発行人によるディスク紹介)

●チャレンジ・インタヴュー
(EFU氏[FAST aka FAST zine])

14. April 2018 by sats
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“March for Our Lives” 私感

3月24日に、全米で銃規制の強化を訴える“March for Our Lives”と称するデモがあった。これは2月にフロリダ州のパークランドの高校で起きた銃乱射事件(17人が死亡)に端を発し、同校の高校生たちが主導で始めたものだ。スローガンはDischargeよろしく“#NeverAgain”。それに共鳴して、アメリカ国内だけでなく、国外主要都市でも抗議行動があったらしい(日本はあったのかな)。

ちょうどその頃、アジア研究者の学会がワシントンDCで行われていて、その端の端にかろうじて引っかかっている相方akがDCに行くのがちょうど24日だったので、デモもついでに見に行こうということになり、私も早朝からついて行った。ちなみに発表者には、日本のパンクスにもおなじみ625マックスもいて、ロシア革命の日本への影響、みたいなことを発表していた。まあ日本にもよく来てるけど、元気そうでした。

昼頃から地下鉄に乗ってDCのダウンタウンへ向かった。地下鉄がラッシュ時の東京みたいになってて既にすごい人。DCまで来て満員電車を体験するとは思いもしなかった。みな様々なプラカードを持っている。駅を上がると、今日のデモのためにわざわざ刷ったと思われるTシャツを売っている人がそこら中にいる。アメリカの首都であるDCには数十万人集まると言われていたから、それを見込んで一儲けしようというわけだろうか。1人の老女が100枚はあろうかというTシャツの山を前にして座っていたが、あんなに刷って売れ残らんのかな、というアンダーグラウンド・バンド的視点で心配する…。
ダウンタウンに着いても、デモというかこの集会はあまりに人が多すぎて、車の通行を規制したストリートはどこも人だらけ。おびただしい数の簡易トイレも用意されたとてもでかい規模の集会だ。我々はスピーチ会場までは到底たどり着けるわけもなく、種々のプラカードを見ながらただの観察者と化していただけだった。参加者は50万人とも80万人とも言われていたようだ。ちなみにこの件についての日本の報道は、「セレブも参加」「アリアナ・グランデが歌った」「ニューヨークではポール・マッカートニーが参加」みたいなのが目立ったが、さすが日本のメディア!と言うしかないな…。
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さて、結論から言ってしまえば、今日のデモは「リベラル」主導の「平和的」なものなので、参加者も全米から高校生が集まったりと年齢層はかなり若く、2017年1月のトランプの大統領就任式のような、ブラック・ブロックがリムジンや大銀行をぶち壊したり、リチャード・スペンサーのような白人至上主義者をぶん殴る、みたいなものはもちろん見られなかった。ブラック・ブロックなんかおそらく興味も持たない類のやつだ。
ただ、これだけでかい集会でも警察の姿はほとんど見られず、いても所々にパトカーが止まっていたり、道案内に答えている警官がいるだけ。あとは完全に放任。デモをやるのに警察がそれを制する、というのは「ありえない」ことなのだ。ただまあブラック・ブロックみたいなのが登場したら大急ぎで飛んでいく態勢は整ってるんだろうが…。
これだけ多数の人々が参加していることは単純にすごいことだとは思う。就任式反対やウィメンズ・マーチなど、特にトランプ政権になってから、こういった大規模なデモや集会に多くの人が集まるようになったとは思うが、自分の意志を示すのに躊躇しない。引率っぽい先生のような人もいたからクラスみんなで来たのかもしれないが、小学生、中学生と思わしき若い10代の姿も多い。男の子も女の子もいる(大人は女性が多かった気がするが、ヒラリー支持者のような「リベラル」の集会だからなのか、銃規制が目的だからなのか…)。ネットでは銃規制反対派が立ち上がった人たちのことを「フェイクニュース」呼ばわりしたり、若者たちはハラスメントにさらされたりもしたようだが、それでもこうやって街頭に出て自分の考えを表現するのが当たり前なのだ。またこっちのプラカード(サイン)は「デモで自己表現」のごとく、手作りのものが多くて、それを見てるのは面白かった。今回はやはりNRA(全米ライフル教会)を批判するものや、日本でもその「沈黙スピーチ」がメディアに取り上げられていたようだが、先の銃乱射事件を生き伸びたエマ・ゴンザレスさんを支持するもの、子どもたちを守れ、というものがほとんど(このあたりのサイトで、そういったサインが色々見える)だったが、その中で社会主義者や労組が下記のようなチラシを配っていたりもした(日本の「国会前」ならこの人達は排除されるのかな)。
workers
ふざけたようなサインはなく、それくらい真剣なんだなというのはわかった。“Am I Next?”(次は私が撃たれる番?)というサインもあったが、それを見て、90年代にNATOがセルビアを空爆していたときに、「ターゲットはここだよ」と射的マークのTシャツを着てNATOを挑発したセルビア人たちを思い出したりもした。もっともあれは相手がもっと強大だったが。

ただ、akとも話していたのだが、気になったのは、“Black Lives Matter”運動のような、ここ数年の警察官による黒人銃殺に対する運動に関するプラカードが少なかったこと。聞いたのは、銃規制運動が「シングルイシュー化」することで、警官による黒人、有色人種への暴力が埋もれてしまっているということだ。まあ「シングルイシュー」や「リベラル」にありがちなことかもしれないが。たとえば児童生徒を守るために、警官を学校に配置する。警官が銃を持つのはとがめられない。何かあれば(何もなくてもか)その警官が黒人を疑い、銃を向ける、ということも起きかねないのだ。

デモのメインストリートとなっていたペンシルバニア・アヴェニューの、FBI本部のある角のところに、デモに反対する「カウンター」、すなわち銃規制に反対する集団もいた(もちろん星条旗付き)。
NRAは「銃が増えれば国はより安全になる」という考えのもとで動いており、あらゆる銃の規制に反対し、共和党の議員に莫大な献金をしているのは報道で取り上げられる通り。これらの「カウンター」の人々の持つサインも、「銃を持った方が長生きできる」とか「アメリカの自由は『敵』じゃない」(銃を持つ「権利」自体が、アメリカの「自由」を体現している、というわけだ)など、あからさまに攻撃的なメッセージではないが、銃を持つ自由も認めろ、というメッセージを放っていた。その集団の回りには警官が何人かいたが、その集団に寄っていって議論をしている銃規制派の人たちもいた。

銃規制反対派とそれを囲む銃規制派

銃規制反対派とそれを囲む銃規制派

いくら学校での銃乱射による死者数が、アメリカでの銃による犠牲者全体の数パーセントだとしても、無関係の子どもたちが学校という場所でいつ殺されるか怯えながら生活を送るのは何とも辛い。でもそこはアメリカ社会。「だったら先生が銃で武装すればいい」とトランプが言ったり、先に書いたように警官を配備すればいい、という、あくまで銃の存在を根底に置いた、力でねじ伏せるような考えも出てくる。銃規制派と反対派の溝は、まるでそれぞれが別の世界にいるようで、埋まるようにはまったく思えない。一つでかいデモを見たからといって何かがわかるわけでもないが、銃社会アメリカがどうなるか、ひいては今後、銃が社会にとってどのような位置づけになるのかも、気にはなる。別に現実と非現実を混同しているわけではないが、それは現実世界ではない映画やゲームなど表現の領域においてもそう。それらの娯楽で、銃を散々見ているのも確かだ。先にNATOのことも触れたが、アメリカが国防の元に行う「悪」に対する「戦争」も、この銃社会の延長線上にある気もする。先にやっちまえば殺されることはない。備えあれば憂いなしの究極版とでも言うか。そう考えるとアメリカという国は本当に歪んでるな。こんなところに引っ越して住める気はなかなかしない。パンクスでも銃を持っていることを自慢げに語る人もいたが(某ハボック先生とか)、ああいう人たちは今何を思うんだろうか。

07. April 2018 by sats
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ニューヨークへ行ってきた

3月中旬、約2年ぶりにアメリカに行ってきた。今回は何と14年ぶりにニューヨークへ行った。前回、初めてニューヨークに行ったのは2004年、無我の米西海岸ツアーの後にフィラデルフィアに3週間くらいいて、フィリーのパンクスたちと一緒に、その年ニューヨークで開かれた共和党大会に反対するデモに参加したときだ。が、滞在中ずっとデモだったりなんだったりで観光はこれっぽっちもしていないので、どこに行ったのか、何をしたのかもおぼろげにしか覚えていない。全米から集まったラディカルなグループが、マンハッタン各地で多種多様な行動を勝手に企画し、何をするのかよくわからないままついていっただけの私は、ただその数と熱量に圧倒されたのだけは覚えている。911後のイラク反戦運動などの余波もまだ残っていた時期で、「運動」にパンクスがガンガン参加していて頼もしかった。
今回ニューヨークには6日間の滞在だったが、この間に見たニューヨークのハードコア・パンク関連のことは、EL ZINE vol.30, 31と2回に分けて掲載される予定なので、そちらをどうぞ。相変わらずの「ジェントリフィケーション」をキーワードに、レコード屋や見たライブのことを書きました。
Deborah Harry

しかしそれにしても寒かった。最高気温は連日3度とか。陽は出てても風が強い。ベタベタの雪も降った。パーティー野郎じゃないので夜は近所のバーに行ったくらいだが、一つ行ったライブの帰りは、寒さでもう泣きそうだった。まあ暑いよりはいいか。
あと他には、翻訳関連の資料やら本探しでひたすら古本屋を回ったり、もはやカンパ制ではなくなってしまったメトロポリタン美術館に行ってベックリンの「死の島」の第2バージョンを見たり(展示物は多すぎるし人も多いし、1日で全部見る気にはなりません。チケットが3日間有効ってのはそういうことなんだろう)。滞在前半はグリニッチビレッジのあたり、後半はブルックリンのプロスペクトハイツと、それぞれakの友人たちのところに間借りさせてもらっていたのでいろいろ助かった。あっちは部屋の住人本人がいなくても、友人がしばらく滞在するから、とドアマンに鍵を預けておいたりとかが普通にできて(そりゃ民泊も当たり前)、日本みたいな、賃貸の契約時に念押しされる、「第三者を勝手に住まわせない」みたいなルールはないわけだ。そういえば昔岐阜に住んでいたとき、海外の友人数人を家に泊めた際、彼らが到着して30分もしないうちに管理会社から電話があり、「鈴木さん、怪しい外国人を泊めていらっしゃるんですか?」とぶしつけに聞かれたことがある。ふざけるなと電話口で怒った覚えがあるが、どうやら同じアパートの誰かが「密告」したらしかった。友人がただ遊びに来ただけでこのありさま。そりゃここまで移民・難民に冷酷な国にもなるわけだ。「日本は『日本人』のもの」という無意識が、様々なレベルにおいて共有されているんだろう。恥ずかしい。
bushwick

古本屋は結構回ったので、昔ここでエルサレムの古本屋や那覇の古本屋について書いたみたいに、そのうち書くつもり。
滞在中は相変わらずファラフェルばっかり食ってたが、もうさすがに書かなくてもいいか。東京でもおいしいファラフェル食べたい。
あとニューヨークのあとはワシントンDCにも行って、ちょうど銃規制強化を訴える”March for Our Lives”の大規模集会が24日にあって見てきたので、これも書いておこう。
March for Our Lives 0324

ただまあ今回の旅の主な目的は、今のニューヨークのパンクシーンや、これまでのニューヨークのパンク的「名所」を見ておこう、ということであり、それらはEL ZINEに載るのでここではまだ書けないんだな…。

ブルックリンで見たデコトラ

ブルックリンで見たデコトラ

02. April 2018 by sats
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EL ZINE vol.29 -SWARRRM インタビュー

EL ZINE vol.29は2月28日発売です。

今回は、2月16日に5枚目のアルバム『こわれはじめる』をリリースする、神戸のグラインドコア・バンド、SWARRRMにインタビューをしています。
今回、アルバム発売に合わせていろんな媒体にインタビューが載っていて、いくつか読みましたが、ああこの人はこういう視点で聞いているんだ、とか、SWARRRMはこういう風に解釈されているんだ、とインタビューさせてもらった側として、様々な発見が多かったんですが、それはSWARRRMというバンドがいい意味でとらえどころのない、常に新しいことをやっているバンドということの証左だということに尽きます。

SWARRRMとは、昔僕がやっていた無我というバンドでSplit CDのリリースがあったりと、いろいろお世話になっていましたが、今回はギターのKapoさんから声をかけてもらい、EL ZINEでもインタビューを掲載してもらうことになりました。せっかくの機会ということで、他の媒体ではあまり触れられていない部分についても話をしてもらえたので、ぜひ買って読んでもらえればと思います。
インタビューのリードにも書きましたが、今回の新アルバムはまたひとつSWARRRMの「新しさ」を更新するものになっていて、グラインドコアを超えて、最近であればZAYやassembrageから、最近のポスト・パンク/デスロックのリバイバルに興味のある人も聞けるような内容だと、個人的には思います。


EL ZINE / VOL.29
29

A4/表紙カラー・本文モノクロ/表紙含め全50ページ

●Nika
(東欧ポーランドを代表する女性ヴォーカル・ハードコア・バンド、POST REGIMENTのヴォーカリストにして、その解散後は、DEZERTERやMOSKWA等のメンバーが指揮したフォーク・パンク・バンドR.U.T.A.へのゲスト参加、現在ではPOCHWALONEとMORUSという2バンドで活動しているNikaことDominika Domczykへのインタヴュー)

●UNA BESTIA INCONTROLABLE
(ex.DESTINO FINALやex.GLAM、ex.CROSTA等々のメンバーを擁し、4月~5月に来日ツアーを予定しているスペインはバルセロナのハードコア・バンド、UNA BESTIA INCONTROLABLEへのインタヴューby Shogo氏/ALTERNATIVE SOLUTION)

●HARAM
(アラビア語で歌うNYCのハードコア・パンク・バンド、HARAMのヴォーカリストであるNaderへのインタヴュー)

●Per Thunell
(スウェーデンのグラインド・コア・バンドFILTHY CHRISTIANS、そしてFILTHY CHRISTIANSとMOB 47メンバーによるハードコア・プロジェクトPROTES BENGT、更にはスラッシュ・ハードコア・バンドBRUCE BANNER、そして3月~4月に来日ツアーを予定しているSEX DWARFのヴォーカリストでもあるPerへのロング・インタヴュー)

●KONTON CRASHER
(アメリカ/クリーヴランドでD-Beatやロウ・パンク・バンドのリリースを手掛けているレーベル、KONTON CRASHERのオーナーであるGaki Nezumiへのインタヴュー)

●Umea Punk City
(ex.AC4~現ACID BLOODのKarlによる、スウェーデンUmeaの現地情報コラム)

●SWARRRM
(ニュー・アルバムを2月にリリースする神戸のグラインド・コア・バンド、SWARRRM へのインタヴューby鈴木智士氏)

●DISGUNDER
(東京のグラインド・コア・バンドDISGUNDERの女性ヴォーカリスト/アンナ氏へのインタヴューbyツトム氏/悲観レーベル)

●DEFORMATION QUADRIC
(昨秋にアルバムをリリースした大阪のノイズ・コア・バンド、DEFORMATION QUADRICへのインタヴュー)

●有刺鉄戦
(弱冠16歳、高校一年生による広島のハードコア・バンド、有刺鉄戦。そのベース・ヴォーカルalatapunk氏へのインタヴュー)

●D-CRASH
(中国は北京発のD-Beatパンク・バンド、D-CRASHのヴォーカリストであるYu Zi Yangへのインタヴュー)

●GHOSTMAKER
(ex.OXYMORON、ex.MAD
SINのメンバーらによるドイツ/ベルリンのオルタナティヴなパンク・バンド、GHOSTMAKERへのインタヴューby Mosh/Knock Out Records)

●LASHING SPEED DEMONS:EL ZINE的IGGY POP史
(IGGY POPのバイオグラフィー及び、IGGY POPがパンク/ハードコアに与えた影響についてby 大越よしはる氏)

●チャレンジ・インタヴュー
(ハチマンユウイチロウ氏[SOW THREAT])

●ES GIBT KEIN WERT
(発行人によるディスク紹介)

15. February 2018 by sats
Categories: el zine, music | Tags: , | Leave a comment

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