オールナイト鈴木則文

「映画というものは、後世に残るものでなく、その時代の喜びや悲しみを背負って生きている人たちのものであり、その時代の『気分』をもっとも端的に現す娯楽表現形式であると信じる私の芸能観、映画観、世界観(えっ!? それもありィ!)のしからしむところであったのだ。」
『新トラック野郎風雲録』(ちくま文庫)P.100

東京にいる内にやっておきたいことがいくつかあるが、その1つが池袋の名画座・新文芸坐のオールナイトに行くことだった。名古屋でよく映画を見ていたころから、いいプログラムをやってるなあと思ったり、何より毎週土曜(?)にやっているオールナイト興行がとても楽しそうだった。オールナイトで映画を見るというのは、悖徳とまではいかないが、どこか世に叛いた感があり、日が変わる近くに劇場に入って何本か見て、外に出る頃には空が白みはじめ、世の中はまた別の朝を迎えているわけである。あの早朝の感じがとてもいい。また連続して映画を見るのは何よりの至福のようでもあり、どうしようもない現実からしばしはなれられる瞬間が延長される。
さて、そんな新文芸坐のオールナイト、去年から機会を伺ってはいたが、タルコフスキーなんか夜中に続けて見るもんでもないし、生役所広司には腰が重すぎた。ボックスセット販売をやればいいのにあまりやらない明らかなマーケティング不足のあの東映ビデオが、ほぼ40周年ということで、遂に売り出した『トラック野郎』シリーズのブルーレイ。この購入は星桃次郎になるべく日夜精進している弟に無理矢理お願いし、私は代わりに鈴木則文先生のちくまからの近刊2冊を立て続けに読み、あの一連の映画郡のスバラシサを再確認していた。そんな矢先に新文芸坐で則文ナイトがやるというので、これに行かない手はない。しかも上映作品が『度胸一番星』、『一番星北へ帰る』というトラック野郎シリーズの中でもかなりエモーショナルな2作品(『度胸一番星』はシリーズで一番好きで何度も何度も見た)。それに『エロ将軍と二十一人の愛妾』&『聖獣学園』という、大衆の味方・鼠小僧の大活躍に、性の解放反宗教と、則文的アナーキーさを濃縮したような2本までついてくる。

というわけでオールナイトの池袋へ。上映前のトークショーも面白く(杉作J太郎の千葉ちゃんへのインタビューのくだりとか 笑)、そして何と言っても大きなスクリーンで見る桃さんのジョークを、これから朝まで一緒に映画を見るんだというオールナイト上映独特の一種の連帯感のようなものに包まれる劇場で声をそろえてゲラゲラと笑い(したり顔で「運輸省関係の仕事」とか、白装束の片平なぎさを求めて佐渡に渡るために『サド侯爵夫人』を一生懸命読む姿とか、ほんと笑うところだらけ)、その一方で金策に失敗するジョナサンの哀切さに、そして何と言ってもこの回は、成就しなかった桃さんの恋に、水に流され地に帰った片平なぎさに、どうしても目頭が熱くなる。原発誘致によって故郷を失った千葉ちゃんや、それぞれの理由でこれまた故郷喪失のジョーズ軍団の協力も得て、権力に向かって「度胸一番星、よーし、一世一代のスピード違反だ! 警視総監に言っとけ! パクれるもんならパクってみろってな!」と宣言しワッパを握る桃さんの「男気」に救われる気持ちで『度胸一番星』は終了。
年貢でこしらえた徳川の財産を盗んでは大衆に還元する正義のヒロイン・池玲子=鼠小僧の大活躍と、ラストの囚人大解放の大奥大オージーの破茶滅茶っぷりに昂揚し(大きなスクリーンで裸もたくさん見ました)、山内えみこのやさぐれ感(まるで「『番格ロック』その後」みたい)と映画の結構な悖徳っぷり(ケン・ラッセルの『肉体の悪魔』では、尼僧たちがキリスト像をレイプするシーンがDVD等で未だにカットされているが、この映画のあのシーンも負けず劣らずである)にドキドキしながら、ついに迎えた『一番星北へ帰る』。ダムの底に沈んだ桃さんの故郷や母親の逸話、それを聞く未亡人・大谷直子の決断など、故郷とは何か、という問いを突きつけられるような、概して下品なトラック野郎シリーズの中ではその趣がやや違う作品だ。しかしながら冒頭引用の則文先生のお言葉にあるように、娯楽映画という体はもちろん外さないし、市井の人々からも目を背けない。これこそが則文映画の真骨頂であるようだ。
桃さんの故郷・東北が舞台ということで、当時(1978年)のいわきハワイアンセンターや花巻港も映されるが、ほかっておいたら都市しか映りこまないだろう映画の中で、こうやって地方を回ってその姿を今40年近く経ってから拝みながら、人々の故郷、また自らの故郷についても考えさせられる、ついでに(どっちがついでなのかわからないが)お色気も下品も笑いも(そして警察への愚弄も)楽しめる。いやはや、何度見ても、素晴らしい映画である。

 

『度胸一番星』で、ドライブインでトラック野郎たちに囲まれながら八代亜紀がこの曲をフルコーラス。名シーン。

15. April 2014 by sats
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