KOFA

今回のソウル滞在の最たる目的である、韓国映像資料院(Korean Film Archive)へ。

デジタル・メディア・シティ駅より徒歩15分くらい。バス乗るのが普通らしい。

2階が資料の閲覧場所となっており、エレベーターで上る。麻生久美子を小さくして韓国風の薄顔にしたような担当員にハングルで話しかけられるが理解できるわけもなく、「ハングンマル モルラヨ」で切り返しての英会話スタート。パスポートの提出、氏名・メールアドレスの記入&荷物をロッカーに預けることで入室許可が出る。
中央のパソコンで資料を検索。今回まず観る予定だった2作の英題を傍に置いてある紙切れに記入して、カウンターにいる先ほどの麻生久美子に渡す。程なくしてDVDのパッケージを持って現れる麻生。その中からDVDの盤のみを別のケースに入れ渡される、「字幕ないけどいいですよね?」と。先日見かけた、この院が公開しているyoutubeについての記事で、字幕はすべて付いているものだと勝手に思い込んでいた矢先の出来事に出鼻挫かれたが、観ないわけにもいかないので盤を受け取る。要は物語の十全の理解に近づくか、近づかないかの問題だ。指示されたブースは「13」。幸先よい。しかしこの席だけソファのヘッドレストが取れていた。

씨받이
シバジ/The Surrogate Mother
1986年 監督:イム・グォンテク

映画の感想をここで書く気はあまりないのだが、いきなりクオリティの高い映画を観てしまい、且つラストの、あのこれ以上ないフレームの使い方で現れる縊死の唐突さにしばらく呆然とした。韓国映画の面白さは何も最近になって始まったわけではやはりないみたいだ。李氏朝鮮で実際に行われていたらしい「腹貸し」の話だが、主役のカン・スヨンという女優の気丈さと無邪気さがこの救いようのない悲惨な物語を上手に包み込んでいるようで、この手の映画特有のただただ暗いという陰湿さは感じなかったが、無事男の子を出産するも、その子の顔を見ることもなく、自らの腕で抱くこともなく故郷に無理矢理帰されての自死には驚愕だ。

VHS起こしだろうか、映像は荒くノイズがよく入る。

観終わってDVDをカウンターに返却し、次の作品を受け取った。今度は古びたVHSである。もちろん字幕などあるわけがない。

피막
避幕/The Hut
1980年 監督:イ・ドゥヨン

これもまた李氏朝鮮の話。洋服を着ている役者もいたので先ほどの『シバジ』よりは後なのだろう。この映画、実は雑誌「Trash-Up」のダリオ・アルジェントが表紙の号に組まれていた「大韓トラッシュ」特集に載っていたもの。そこに載っていたコメント通り、観賞可であった。可能ではあったが、字幕が付いていたらな・・・と。特筆すべきは、気の狂った女たちがただただ自傷するシーン。こちとら脈絡がわからないので口をあんぐり空けて見入るだけだ。裂けて血が出るまで自分の背中を鞭で打ったり、熱々のコテを陰部に押し付けたり・・・。その中の女の一人を、避幕という死にかけの人間を収容するあの世とこの世の境目の施設に住まう男(武藤敬司似)が助け、恋仲になるも、身分違いの恋愛のために殺され、登場する巫女はその娘であった、という復讐譚だったのだろう。こう聞くと牧口雄二の映画みたいだが、もっと大真面目であった。後はその巫女と母親が飛び跳ねながら祈祷し人を殺してしまうシャーマニック・シーンの埒外なハイテンション振りも記しておこう。

VHSだった。もちろん冒頭には予告やCMが入っており、過ぎし日の韓国を目撃。

李氏朝鮮時代の女性が主役という二作を観終えてぐったりしながら三作目を物色したが思い当たらず、反対側にあった本や冊子の資料室で今日のおさらいも兼ねて読書。絶版になっている佐藤忠男・李英一著の『韓国映画入門』という本が所蔵されており、そこに今日観た二作への言及もあった。

「そんな怪異な姿になってもなお、ただ自分のあわれな身の上を嘆き、一日も早く安息したいと願っているだけであるらしい。悲しい悲しいこの幽霊!」(『避幕』の武藤敬司似が20年振りに棺から姿を現したことについて。 P.268)

佐藤忠男とイム・グォンテクとは親交があるようで、イム監督が「韓国の溝口健二」と評されたことについて、「女の男性中心社会に対する恨みや反抗を主題とした作品が多い」、「がっちりとした重厚なドラマの作り方。」(P.332)と説明している。また『韓国映画の精神―林権澤監督とその時代』という著書もあるらしい。帰ったら買って読もう。『キルソドム』や『曼荼羅』、『旅譜』など、もう2,3作はここで観ておきたい。その他観るべき映画をメモ。

パスポートを返してもらったら、youtubeで幾つかここの所蔵映画が観れるとurlをメモした付箋を麻生久美子から貰った。上のブログで紹介されていたサイトのことだ。ありがとう。

1階のミュージアムをチラっと見て、B1階の劇場へ。今日は13時から『タクシー・ドライバー』がやっていた。ここも無料らしい。このような施設で国をあげて自分たちの文化の保存、整理、公開を行っているのは日本人が見習うべきことだろう。もっとも日本ではやろうと思ってもそれが量的に追いつかないのかもしれないが。そういえば先に出ていたキム・ギヨンやイ・マンヒのDVD-BOXもここのリリースだった。しかしこちらの古典旧作のDVDを民間企業が出しているのを見たことがないので、映画のソフト発売については何かお国の事情があるのかもしれない。そこら辺はこちらの友に聞くとする。こちらの友は現在開催中のヨス万博に行っているらしい。

その種類によって前払いなのか後払いなのか、はたまたカードのみの支払いなのかよくわからないバスが好きでないので、デジタル・メディア・シティ駅までまた徒歩で向かう。健脚な韓国人を見習う。

20. May 2012 by sats
Categories: films, south korea | Tags: , , , , , , | Leave a comment

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