Fantasy Film Fest

ベルリン滞在中に散歩をしていたら、あるポスターを見かけた。

Fantasy Film Fest

ベルリンの後半は暇を持て余していたので、ちょうどいいやと思いこの映画祭のラインナップを見ていたが、ほとんど知っている監督がいなかった。どうやら名前とポスターのイメージからして、ホラー、サスペンス系の新作映画を公開する映画祭らしく、ホームページを適当に見て面白そうなものを幾つか見てみることにした。3日で計4本観た。

Violet & Daisy
2011年 アメリカ
監督:Geoffrey Fletcher
流行りの歌手Barbie Sundayの最新の服が欲しい二人の女の子が殺し屋という設定のブラックコメディ。タランティーノの映画ばりによく喋る二人の女の子とある殺しのターゲットとのやり取りが映画を妙な方向に導いていく。
女の子の片方はどこかで見たことがあるなと思ったら、『ハンナ』や『ラブリーボーン』の子だった。未見だが、監督は『プレシャス』という映画の脚本でアカデミー賞を取った人らしい。

The Tall Man
2012年 アメリカ=フランス=カナダ
監督:Pascal Laugier
ある村で子供が次々といなくなるという事件が起き、村の看護婦であるジェシカ・ビールは・・・という映画だが、どう考えてもネタバレ禁止の映画なので詳細は省く。
この監督はあの『裁かるるジャンヌ』を思いっ切り引用していたフレンチ・トーチャー映画『マーターズ』の監督だった。それを期待するとちょっと外されるが、妙に政治的な映画でもあるのが興味深かった。

Chained
2012年 アメリカ
監督:Jennifer Lynch
デビッド・リンチは好きだけどその娘の映画は実は初めてだった本作。監督の舞台挨拶&トークショー付きだった。
あるシリアルキラーが少年を監禁、その少年を「ラビット」と名付けて「教育」していく映画だが、その少年が成長過程で自我に芽生えて新たなモンスターになっていく様が面白かった。が、オチは個人的に納得いかず。ジェニファー・リンチが言っていた、これは制作会社とかの意向でこうせざるをえなかったみたいで、ディレクターズカットの方が凄いわよ!と。ちなみにジェニファー女史は金髪ドレッドヘアーの小太りのおばさんで、ずっと笑いながら喋ってる愉快な人だった。「暗くて陰惨な物語だけどそれを作るのに作り手がデプレッシブになる必要はないわ! 現場は冗談が飛び交ってて楽しかったわよ!」と言っていたのが印象的だ。ちなみにラビット役の少年、青年は友人から紹介してもらってスカイプで話して彼らに決めたらしい。

God Bless America
2011年 アメリカ
監督:Bobcat Goldthwait
これは最高に面白かった一本。仕事も失って余命も限られてしまい守るべきものが何もなくなってしまった冴えないバツイチ中年男と過激な女子高生が、モラルの低下したアメリカ社会に銃を向けて殺しまくる現代版『俺たちに明日はない』+『タクシードライバー』+『レオン』みたいな映画。カラっとしたブラックコメディで、アメリカの下らないリアリティショーの女の子や映画館でマナーの悪い奴ら、音痴な障害者男をテレビに出演させて笑ってやがる下らない番組などに天誅を下す。
主役のTara Lynne Barrという女の子もめっちゃキュートでもう少し見ていたかったので、ターゲットがもっと増えてあと20分くらい尺が長くてもいけたような気がした(そういえばヒッピーをターゲットにすることで同意した二人はその後ヒッピーを撃っていたか?)。二人がターゲットを撃ち殺す度に、妙なカタルシスのせいなのか、場内から笑い声と共に拍手まで起きていた。ドイツ人も映画を観ながら感情をそのまま表に出すタイプのようだ。

日本でもちょうど公開されているみたい。これは日本語字幕付きでもう1回観たい。
ゴッド・ブレス・アメリカ公式サイト(予告あり)

というわけで4本観たわけだが、チケットは1本9ユーロ(約900円)、劇場はCinemaxxというポツダム広場近くのシネコンの中の500席以上あるような大きな劇場だった(近くのソニーセンター内にももう1会場あり、合計2会場)。平日夕方の回でも席は7割ほど埋まっており、土日はほぼ満席の盛況振り。もちろん大きなスポンサーも付いて割と商業的な映画祭なのかもしれない。広告がたくさん入った80ページあるパンフレットが無料だったし、映画の上映前には映画クイズみたいなことをやって正解者にDVDをプレゼントしていた回もあった。また『Violet & Daisy』はFresh Bloodというコンペティション部門で上映され、観客が1から6までで映画の評価をしてアウォードを決めるといった仕組みだった。ベルリン以外のドイツの都市でも行われているみたいだ。
ちなみに上映はドイツ語字幕なし。日本映画だと三池崇史の『逆転裁判』がかかっていたが、これには英語字幕が付くと書いてあった。ほとんどのドイツ人は英語が話せるらしいが、映画祭において特に言語の壁というやつは大きいのだろうと思った。たくさんの新作の字幕を用意するのは大変な作業に決まっている。日本でこういった規模の映画祭を行うには、まず聴衆の英語の勉強から始めないといけないのかもしれない。

日本で映画祭と言えば、数年前から大体毎年行っているカナザワ映画祭というのが今年も9月に金沢で行われる。毎年テーマが設定されているが、今年は「エロス」とのこと。思えばこの映画祭でコートの下は白ジャージ上下にステッキとグラサンというかっこよすぎる内田裕也の雄姿も見たし、高橋洋x横山茂雄のオカルト対談で変なインド映画を見せられたり、真夜中の古ぼけた劇場で『シェラ・デ・コブレの幽霊』という未知なる映画も見た。フレデリック・ワイズマンもここで知った。組織が違うのかもしれないが、その前のコミュニティシネマ映画祭では『博徒七人』や『女獄門帖 引き裂かれた尼僧』といった、未だに忘れられぬ悪夢のような映画も体験した(ついでに水野久美の処女作も 笑)。あ、あと殊能センセーを探し当てるのも毎年の重要な目的だ。とにかく金沢の人たちが羨ましく思える素晴らしい映画祭である。
今年は行けないのが残念だが、クリスチーナ・リンドバーグがやってきてティーチインをするなんて素敵過ぎる! そういえば上記『Chained』と『ポルノの女王 にっぽんSEX旅行』は監禁の中で被害者が小さな自由を見つけていくという点でよく似ている。ジェニファー・リンチは『ポルノの女王 にっぽんSEX旅行』を観ていたのかもしれない! 観ていないか。

カナザワ映画祭ウェブサイト

01. September 2012 by sats
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