2017年、印象に残った本、音源 | 焔と煙霧

2017年、印象に残った本、音源

2017年に読んだ本の中から、印象に残ったものを。
感想も適当で、ちゃんと本を読んでいないことがバレるので恥ずかしい限りですが、まあ実際に読んでいるのは私自身なので、仕方なし。
振り返るとオムニバスや作家の短編集ばかり読んでいたので(1冊を腰をすえて読もう、という気があまりなかったんだろう)、そういうのは省いた(「心中小説名作選(集英社文庫)」なんて結構面白かったんだけどな)。
新刊をちゃんと追いかけていないが、なるべく2017年に近いもので…。以下、読んだ順で。

  • タイム・スリップの断崖で/絓秀実 (書肆 子午線 2016年)
    ちょうど自分が大学を卒業して、バンドをやりながら野宿労働者の運動に関わったりし始めた2004年から、「リベラル」が今上天皇を「民主主義」の最終防波堤として持ち上げるという、もう何だかわけがわからない状態になってしまった2016年までの絓氏の時評集。その時々で、ああこのとき自分は何をやっていたんだろう、と思い返しながら読んだが、結局どの時代も何もしていなかったんだなあ…。
    レベッカ・ソルニットと社稷を同列に置いてあったのは、akにそっと教えといた。
  • むずかしい年ごろ/アンナ・スタロビネツ 沼野恭子訳(河出書房 2016年)
    ボディスナッチャーとしての蟻。人称を変えることで侵食の程度が表されていて、おまけに字面にもアリさんマークが出てきて、ここ最近では「最悪」の読後感だった。ぞぞけが立つ、というのは名古屋弁だろうが、まさにそんな感じ。他の作品も強迫神経症的で、再読はためらわれる。
  • 眼の奥の森/目取真俊(影書房 2009年)
    沖縄と国家/辺見庸、目取真俊(角川新書 2017年)
    去年『ハクソー・リッジ』を見たとき、メル・ギブソンはこの小説を真面目に映画にしてみなさい、とでも言いたくなったのが正直な感想。太平洋戦争後期、沖縄での米兵によるレイプ事件が、現代のいじめにまで連環していく。辺見庸との対談は、恐らく今最も信頼に値する、現存する作家の2人によるもので、「腹をくくれ」と叱咤されているよう。

    「大衆とか、民衆とか、人民大衆ってのは、きわめてあやしいものだという思い込みがあってさ。だからそういう環境のなかで目取真さんの話をきいていると、清新なものがあるんだ。『最低の方法だけが有効なのだ』という最悪のテーゼを、あえて受容しますっていうのかね」(「沖縄と国家」P.87)

  • 戦争の法/佐藤亜紀(新潮文庫)
    近いバンドで例えると、DISTURDみたいな硬質で乾いた小説。『スウィングしなけりゃ意味がない』も読まないと。
  • MDC: Memoir from a Damaged Civilization: Stories of Punk, Fear, and Redemption/Dave Dictor (Manic D Press 2016年)
    先日出たEL ZINE vol.28にレビューを書いたが(近々ここにも載せよう)、これは本当に面白いエピソードの連続で、まあ知ってる話というのもあるし、何より自分がずっと関わってきたことの大元の話になるわけで、わりと早く読めた。やはりオリジナルの人、特に最初からパンクの政治性をブレることなくずーっと維持してきた人の経験や言葉というのは、その重みが全然違う場合が多いので、こういう本は引き続き読みたい。

そういえば「タイム・スリップの断崖で」と言えば、発行元の書肆 子午線の雑誌「子午線 Vol.4(2016年)」に、故安川奈緒氏の詩篇が載っていて、思わずビビった。別にファンだったとかではないのだが、2012年9月にパリにいたときに、オペラのブックオフに行って何となく本を見ていたら、「映画芸術」や「現代詩手帖」などが何冊かあって、おっ、と思って中をペラペラめくっていると、どうやらそれらは寄稿していた安川氏への献本だったようで、中には手紙が入っているものすらあった。亡くなってすぐだったので、タイミング的に売りに出されたのだろうと。偶然にせよそれを手に取ってしまったときは、何とも言えぬ気持ちになった。この詩篇を読んで、そのことを思い出した。

さて、今年は何を読もうか。ロシア革命100周年ということで買った本もまだ全然読めてないので、まずそのあたりから消化していかないと、知らぬ間に110周年とかになってそうだ。


ついでによく聞いた音源も(これも2017年リリースに限らず…)。

  • assembrage/A Curtain Call of an Aeon CD (Guerrilla Records)
    インタビュー用に少し早く聞かせてもらえたので、以降文字通りずっと聞いていた。最早名盤!
  • ZAY/Cry for the Moon CD (Zay-Nin Records)
    これもミックス前から聞かせてもらってたが、自分が昔使ってた古いMarshallのヘッドを貸したら、とんでもない音になっていたので、いやはや宝の持ち腐れとは正にこのことだなと。今後の活動も楽しみなバンドです。
  • VA/The Portland Edition LP (American Leather Records)
    流行? 糞食らえ、というJerry A.のアティチュードだろうが、ポートランドに長く住んで、その土地の変遷を目の当たりにしてきた人物がまとめたような内容なのはさすが。マスタリングはこれも例のブラッド氏なのね。
  • Insect Ark/Portal/Well CD (Autumnsongs Records)
    この人が前にやってたBee and Flowerが好きでよく聞いてたけど、あの艶っぽい声を封印したインストバンド。割と読書向けでした。
  • Pink Floyd各種(特に『Meddle』)
    酒飲んだ帰りの混んでる山手線でフルボリュームで聞くと、ピンク・フロイドはとても心地いいことがわかったのが、2017年の大きな収穫(電車自体の居心地の悪さの程度を下げられる。本当に都内の電車が嫌いで嫌いで…)。

あとG.A.T.E.Sの新譜もよく聞いたし(インタビューしたバンドばかりだな)、ペジャからもらったユーゴスラビア時代のシンセポップ、Romantične BojeのLPや、すげー今更なんだろうが、ドイツのオカルト・デスメタル、Necros Christosもよく聞いた。
ここ数年またレコードを買うようにはなったが、買う量は圧倒的に少ないので、その中で何か面白いものと出会えるといいんだけどな。

11. January 2018 by sats
Categories: books, music | Tags: , , , , , , , , , | Leave a comment