2016年 読んだ本の中から

去年は読んだ本の感想文をタラタラとここに書いていたので、そのまとめも兼ねて、新刊とか関係なしに、印象に残ったものをあげておきます。

  • 富士 /武田泰淳(文春文庫)
    稲生平太郎氏と高橋洋氏という、これまたカナザワ映画祭にも関連するお二人の名対談本「映画の生体解剖」(洋泉社)で、「手術台」や「水」というカテゴリと合わせて載る予定だった、「武田泰淳」というカテゴリがカットされてしまった、というのを前にどこかで読んだが、そこに、この『富士』は相米慎二が映画化を企画していたとも書かれていた。この正常と異常のあるかないかわからない境目が、どのように映像になったのか、非常に気になる。去年の今上天皇の「生前退位」なんて、正にこの富士のような不条理な話じゃないのだろうか。
  • 希望、平和通りと名付けられた街を歩いて/目取真俊
    「インターネット上でどれだけ吠えようが、議論をかわそうが、実際に工事が進められている現場に人が集まらなければ話にならない。」(目取真俊氏の1/2のブログより:沖縄を1日ん早く「基地の島」ぬ苦世から解放さーびら。
  • ブラック・メタルの血塗られた歴史 / マイケル・モイニハン、ディードリック・ソーデリンド著、島田陽子訳(メディア総合研究所)
    ようやく読んだ。著者がBlood Axisの首謀者というのを途中まで知らなかったのだが、今やパンクもメタルも玉石混交なので、CRASSの本とこれを一緒に本棚に置いておいても誰も文句は言うまい。感想はここの真ん中らへん
  • 殊能将之 未発表短篇集 / 殊能将之 (講談社)
    去年はこれが出たのですごく嬉しかった。memoの書籍化待つ!
    感想はここの真ん中あたり
  • 時間 /堀田善衛(岩波現代文庫)
    辺見庸の『1937』において背骨のような役割をしていた、堀田善衛による「南京事件」についての小説を年の暮れに読み終えた。読んでると具合が悪くなってくる(特に前半)ような作品だが、途中でストップできる類のものでもない。「逃亡と暴発」を重ねた帝国陸軍の「他人事」感とは対照的に、主人公の中国の文人・陳英諦が吐くことばは、まさに時間をこえて現在にも通用してしまう。

    「わたしが、目を蔽いたくなるほどの悲惨事や、どぎつい事柄ばかりをこの日記にしるしているのは、人間が極悪な経験にどのくらい堪えうるか、人間はどんなものか、ということを、痛苦の去らぬうちに確認してみたいがためにほかならない。」P.191

あとは脈絡もなく、シャーリィ・ジャクスンの『くじ』の文庫化(ハヤカワミステリ)や『なんでもない一日』(創元推理文庫)をパラパラと読んで、毎回イヤな読後感を楽しんで、似たようなのでブライアン・エヴンソンの”Windeye”も相変わらず妙な話ばかりだったし(と言ってたら、また読み切らない内に邦訳が出てしまった…)、何かのアンソロジーで読んだ村山槐多の「悪魔の舌」というのが、飛騨の男がなめくじ飲み込んだり墓堀り返したり。あとは薩長をテロリストとする『明治維新という過ち』(原田伊織著 毎日ワンズ)は面白かったな。

イヤになることばかりで、本を読むことはその逃避なのか、それとももっとイヤな気分になって、心の浄化作用を起こすことなのかわからないが、もうすこし筋のある読書をしないといかんなと思いつつ、積読は消化していかないといけない2017年になりそうです。

04. January 2017 by sats
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