フィルムセンターにて

せっかく東京にいるのに映画がまったく見れていない。
新作なんぞは今月1本も見ていない。今の毎日の生活リズムだと、平日は午前中か深夜しか時間がないので、まあこればっかりはどうしようもない。根本的な出不精を直して、週末にまとめて観るか、小まめに時間を作るか。でもそれだとどうしても名画座的なところに足が向いてしまったり。

そんなわけで今月は、京橋のフィルムセンターの特集「逝ける映画人を偲んで」で、若松孝二の『欲望の血がしたたる』を観た。
1965年の作品ということで、ググってみる限り『情事の履歴書』や『壁の中の秘事』の直後の作品のようで、説明を見ると、60年安保の残党がエリートサラリーマン街道に乗って、それを快く思わない周りの元「同士」が男を血祭りに上げるのかなと妄想したが、実際の内容は、男の復讐というよりは、女の復讐の話であった。あまり見る機会のない映画だろうから概略を以下ネタバレするが、社長の妾を利用してある証券会社に入り、その娘と結婚して虎視眈々と社長の座を狙う60年安保の闘士だった男A、その男の元同士の貧乏絵描き、実は男Aは絵描きの妹を利用してその証券会社に入っており、捨てられた妹は絶望し冒頭の上高地・大正池で自死。絵描きは男Aの妻に惚れ、男A曰く、妹の死は実は絵描きが肉体関係も含めて妹を酷使した結果だと。そんな狭間で男Aは300万円を絵描きにやるからお前はパリに行けと買収(その前に別の元同士の新聞記者も買収済み)、絵描きも折れてしまい、そんな双方不甲斐ない男たちを、それまでただ従うだけの貞淑な「良い子」だった妻は、順に殺すわけである。ラストは妻が一人、大正池の上。
ピンク映画ではあるのだろうが、乳首も出なければ服を着たまままぐわったり(これって『恋空』のガッキーじゃん。ガッキーの性描写は自主的に60年代中盤基準なのか)と、当時の性描写の厳しさが感じられる映画ではある。かと言って別に私程度のたまに映画を観るレベルでは、心底楽しめる、というわけでもなかったのだが、ラストでこの妻が自分の夫だけでなく、絵描きまでも殺すという展開にははっとさせられた。ポルノ映画には女性が必ず出てくるわけで(ゲイポルノはこの限りじゃないかもしれないが)、彼女たちは基本的に虐げられて大変な思いをするものが多いのだが、その女性の鬱屈や悲惨な体験がどこかの時点である種、解放される瞬間が映っている映画というのも少なくない。別に女性が最終的に「勝利」するとかそういうわけではないが、要は女性が、人間がきちんと描かれているかどうかということなのだろう、日活ロマンポルノなら田中登の諸作や、東映なら牧口雄二の『玉割り人ゆき』などはとてもフェミニスティックな映画ですらあると思う。いまおかしんじの映画も(数本しか見たことないけど)近いものがあった気がする。『かえるのうた』なんかは素敵すぎて何度もDVDを観た(笑))。どれも出てくる女性はとても魅力的である。というわけでこの若松孝二の1965年の映画も、女性側からの最終的な判断が男共を凌駕するという点で、心に残った。
あとは立ち枯れの木が何ともアポカリプティックな大正池は、この世ともあの世ともつかぬ風景であり、今度松本に行ったら是非行って見たいなと。

フィルムセンターの同企画ではもう1本、『ウルフガイ 燃えろ狼男』という、これまで観る機会を逸してきた千葉ちゃんのアクション映画をようやく観たが、安岡力也のいるGSバンドの名前がその名も「モブス」だったり(!)、「おんなの爪は虎の爪~♪」と薄幸さ丸出しで歌うアングラ奈美悦子があまりに暗かったり、謎のハーフの美女(「東京エマニエル夫人」の人だったんだ)が本当に謎だったり、とてもグロい千葉ちゃんの内臓をスクリーンいっぱいに見せつけられたり、それが腹の中にシュルシュルと納まったり、サイケな音楽はやたらとかっこよかったり(この音楽の馬場浩という人はどういう人なんだろう。ネット情報ではこれと何と『怪猫トルコ風呂』の2作しか出てこない・・・)と、かなり変な映画だった。DVDにならないのは何か理由があるのか知らないが、これはどこかで『おおかみこどもの雨と雪』と併映したら面白いんじゃなかろうかとふと思ったり・・・。

ちなみにフィルムセンター、昔の映画が500円で観れるのは大変ありがたい。が、この辺で書いたように、これが韓国の映像資料院ならば、劇場での上映もタダというわけだ。日本のフィルムセンターの図書館や資料館にはまだ行ってないので単純には比べられないが、KOFAはやっぱよかったなあ。

http://www.youtube.com/watch?v=_YKfMF5R2c0

韓国映画と言えば、パク・チャヌクのハリウッドデビュー(今週末日本公開なんだ)に続いて、ポン・ジュノの新作『Snowpiercer』が楽しみだ。ソン・ガンホも出るよ!

28. May 2013 by sats
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