EL ZINE vol.31 -FATUM インタビュー/ ニューヨーク2018〈後編〉

EL ZINE vol.31は6月28日発売です。
今号では、ロシアのメタリック・クラストバンド、FATUMのインタビューを載せてもらっています。発音に悩む単語ですが、カタカナだと「ファータム」という表記が一番近い、「運命」なんかを意味するラテン語らしいです。

今回は、ZAYの招聘によるツアーもあり、ZAYからの依頼でインタビューすることになったんですが、バンドのことはもちろんですが(あの超クラスティーなアートワークのこととかも)、ロシアの現行バンドのことや、あとちょうどインタビューをする直前に偶然図書館で読んだ、「ゲンロン」という雑誌のロシア現代思想特集や、映画『霊的ボリシェヴィキ』なんかにも関連したりと、最近よく目にするので気になっていた、ロシアの極右思想家・アレクサンドル・ドゥーギンのことを何気なく聞いてみました。するとものすごくちゃんとした回答が返ってきて、このバンドは完全に信頼できる!と確信しました(笑)。それ以外にも、ロシアとウクライナの関係(ウクライナの「革命」について、現地の複雑な状況(ウクライナ政府に後押しされたウクライナのネオナチ武装隊に、ロシア人が加入して、東部独立派地域のロシア系ウクライナ市民を殺す、とか)や、プーチンに対するデモの真相など、手前味噌ですが、(そういうのに興味があれば)お世辞抜きに非常に興味深い内容となってますので、ぜひ買って読んで下さい。
もっと言うと、「アナキスト・ハードコア・パンク的なラディカルな思想を持ってて、かつ音もかっこいい」ことを両立できているバンドはなかなかいない、という私の勝手な持論を覆してくれるバンドでもあります。彼らも「今まで受けた中で一番おもしろいインタビューだった」と言ってくれたし、何より日本に来ることをとても楽しみにしてるので、そんな彼らが何を考えながらあんなバンドをやってるかを知るきっかけにはなるかと思います。

あと今号では、前号の続き、「ニューヨーク2018」の後編も載せてもらっています。前編(さきほどここにも載せました)はアメリカ滞在中に書いていたので勢いでなんとかしてましたが、後編はその勢いももうないので、前編でよく登場した「ジェントリフィケーション」を一から説明しながら、ニューヨークで起きた/起こっているジェントリフィケーションから、東京の山谷~南千住から、現在の渋谷、釜ヶ崎で起こっていることまでを横断して書きました。パンクス=お金がないがコミュニティはある、にとっても無視できない問題だと思うので、こちらも合わせてご一読いただければ。



31
EL ZINE vol.31
6月28日発売予定

●NO FUN AT ALL
(10年ぶりとなるニュー・アルバム『Grit』を4月にリリースしたスウェーデンのキング・オブ・メロディック・パンク・バンド、NO FUN AT ALLのヴォーカルであるIngemarへのインタヴュー)

●NO FUN AT ALLアルバム紹介
(NO FUN AT ALLがこれまでにリリースしたアルバム6枚のディスク・レヴュー)

●RIXE
(フランス/パリのオールドスクールなOi!パンク・バンド、RIXEへのインタヴュー)

●FATUM
(ZAYの招聘により8月に来日を予定しているロシア/モスクワのメタリック・クラスト・バンド、FATUMへのインタヴューby 鈴木智士氏)

●HANK WOOD AND THE HAMMERHEADS
(7月に来日を予定しているニューヨークのガレージ・ハードコア・パンク・バンド、HANK WOOD AND THE HAMMERHEADSへのインタヴューby Shogo氏/GREAT DANCE & Jin Windam氏/LOVE OVER VOLTAGE)

●Umea Punk City
(ex.AC4~現ACID BLOODのKarlによる、スウェーデンUmeaの現地情報コラム)

●END OF POLLUTION
(福岡市博多区のクラスト・パンク・バンド、END OF POLLUTIONのギター・ヴォーカルであるJet氏へのインタヴューby ツトム氏/悲観レーベル)

●SLANT
(SCUMRAIDやAGARI、BLOODKROW BUTCHERなどのメンバーらによる韓国の新バンド、SLANTへのインタヴューby
Shogo氏/GREAT DANCE)

●Dra at helvete!
(正体不明の覆面バンド、SKITKLASSのヴォーカルであるSkitkatt氏によるコラム)

●CHAIN CULT
(DIRTY WOMBSやCONSPIRACY OF DENIALなどのメンバーらによるギリシャ/アテネのポスト・パンク・バンド、CHAIN CULTへのインタヴュー)

●RATOS DE PORAO
(7月に来日を予定しているブラジルのベテラン・ハードコア・バンド、RATOS DE PORAOのヴォーカルであるJ.Gordoへのインタヴューby Rafael Yaekashi)

●高松ハードコア特集 発売記念トーク・ライヴ・レポート
(前号vol.30で掲載させて頂いた「高松ハードコア特集」をキッカケに開催されたトーク・ライヴのレポート記事by 井川氏/IMPULSE
RECORDS~TOONICE etc)

●羅生門
(ワシントンのハードコア・バンド、羅生門でヴォーカルとして活動している浦上皓平氏へのインタヴューby Shogo氏/GREAT DANCE)

●ニューヨーク2018 後編
(2018年3月にニューヨークを旅してきた鈴木智士氏による紀行文、及び「ジェントリフィケーション」についての解説)

●DOWNHATTA
(ブラジルのハードコア・バンド、DOWNHATTAへのインタヴューby Rafael Yaekashi)

●LASHING SPEED DEMONS:MOTORHEAD/Robbo & Wurzel Era
(前号vol.30の続きとなる、”黄金トリオ”期以降の、1982~95年のMOTORHEADについてby 大越よしはる氏)

●チャレンジ・インタヴュー
(クボラ氏[Slight & Slappers])

●ES GIBT KEIN WERT
(発行人によるディスク紹介)

13. June 2018 by sats
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ニューヨーク2018〈前編〉

4月末に出たEL ZINE vol.30に掲載してもらった、ニューヨーク紀行文の前編をこちらにも載せておきます(少しだけ加筆修正済み)。
文中に登場するバンドや施設などの音源、ウェブサイトはこちらをどうぞ。
後編は、ほぼジェントリフィケーションのことしか書いてませんが、今月末発売のEL ZINE vol.31に掲載されるので、合わせてどうぞ。


ニューヨーク2018 〈前編〉

去る3月にアメリカに行き、5日間ほどだがニューヨークを見て回ってきた。今回はその紀行文の前編です。

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予定されていた仕事が延期になって、ぽっかりと時間が空いてしまった。私の相方・通称ak(米国籍)は、所用で現在ニューヨークに滞在中。なので今行けば宿代はかからない。ニューヨークにはしばらく行っていない。はるか昔のことに感じるが、2004年のブッシュJr.共和党大会に反対する大規模デモに、当時滞在していたフィラデルフィアのパンクス、NEMAやJIHADの元メンバーなんかと一緒に3日間だけ行ったのが最初で最後だ。マンハッタン中がデモ隊とそれに対する警備で覆われ、「通常」のニューヨークを楽しむ暇なんかなかった。つまり私は、ニューヨーク経験がほぼゼロだ。
航空券はそこまで高くなかった(北京乗り換えのAir China便で、帰りは北京で14時間待ちの、暇人向けで過酷なヤツだが)ので、とりあえず行くことにした。

旅は事前の情報収集があった方が充実するが、今回はそんな時間もない。以前NYCパンク特集もやっていた本誌編集の山路氏と、去年ブルックリンでライブをやったG.A.T.E.S二ツ木氏にレコード屋やライブ関係の情報だけ聞きながら、14年振りにマンハッタンへ。JFK空港から当座の滞在先のグリニッチヴィレッジまで私を運んだAトレインは、何か拍子抜けするほどクリーンだ。ニューヨークの地下鉄はもっと汚くて暗然としていた印象があったが(前回訪れた2004年は、既にルドルフ・ジュリアーニによるニューヨーク市「浄化」後なので、地下鉄はその昔みたいな「危険」な乗り物ではなかったが、それでもそこら中の車両にグラフィティはあった気がする)、東京やロンドン、ベルリンなんかの大都市の地下鉄と何ら変わりがない。パリの小便臭い地下鉄の方が暗く、雰囲気が悪いくらいだ。

さて、勢いで来たニューヨーク。第一の目的は古本屋巡りで、今ニューヨークにはいい古本屋がたくさんあり、そちらは目的をほぼ達成(ニューヨークの古本屋についてはこちらをどうぞ)。あと見たい絵が1つだけあったメトロポリタン美術館にも行った(しっかり25ドル取られたが)。が、あまりこの記事には関係ないのでここでは省略。まずはパンクのレコード屋についてだ。
マンハッタンでの滞在先だったグリニッチヴィレッジに、Generation Recordsという店がある。ここはいわゆるNYHCやメタルが割と多めで、地下にはアメリカのそこらの郊外にあるスリフトストアに置いてそうな、ジャケットが擦れきった古いレコードも大量に置いてあった。が、高い。レコード価格沸騰はここ数年で最早当たり前の事実になったようだが、それでもたとえばリイシュー盤の新品に30ドル出せるほど私の懐事情は芳しくないし、当然のことかもしれないが、価格高騰とレコード欲は見事に反比例した。地下のレコードはサントラやパンクの7インチだけ見たが、興味をそそる物なし。AGNOSTIC FRONTの新しい7インチが19ドルで売っていたのにはぶったまげた。冗談かよ。一体どんな金持ちがこんなレコードを買うんだ。あと昔ベルリンのレコード屋で見かけた日本のバンドのブートや、新発売っぽいブートが売っていたことも記しておこう。ネットがどれだけ普及しようが、ブートの歴史に終わりはなさそうだ。
この店にも、最近のレコードブームの一翼であるらしい昔のB級(だけじゃないが)映画のサントラLPのリイシューが新品で売られていた。たとえばPORTISHEADのジェフ・バーロウなんかは、自身のレーベルInvada Recordsがもはやサントラ・レーベルと化している気もするが(『フリー・ファイア』や『エクス・マキナ』のような、コンポーザーのベン・ソールズベリーと一緒に手がけたトラックはかっこいいけど)、そういったサントラLPもどれも30ドル越えだ。
generation records
18th通り沿いにあるAcademy Recordsというお店は、オールジャンルのレコード+結構な数のDVDやブルーレイがあったが、目ぼしいものはなし。別の日にマンハッタンのBook Off(45th通り沿い) にも行ったが、こちらも大量の薄汚れたDVDや、あとは日本のアニメ関連のものやら、ギターやパソコン関連機器などHard Offで売ってそうなものが置いてあったが、「一体誰がこんなものを持ち込んだんだ」というような和書が結構あったパリのBook Offと比べるとつまらない。もっともどちらも店員に日本語を話す日本人らしい人がいたが、あの人達はいくらもらって働いているのだろうかと疑問は残る。

さて、Lトレインに乗ってマンハッタンを離れ、ブルックリンへ向かおう。Morgan Ave.駅で降りると、そこはまるでカリフォルニアのオークランドのようなだだっ広い倉庫地帯だ。ただここもジェントリフィケーションが進むブッシュウィックという地域。そこらじゅうで工事は進み、妙なデザインのマンションがいくつも建設中。でもここはまだ腐ってもブルックリン、マンハッタンみたいな見せかけの清潔さはなく、道はガタガタで土埃やビニール袋が宙空を舞う。そんな中Flushing Ave.を東へ歩くと、Material Worldというレコード屋が見つかる。ここはHeaven Streetという名前で、EL ZINE vol.17のNYC RAW PUNK特集に載っていたレコード屋だ。この店にKatorga Worksというレーベルをやってて、去年G.A.T.E.Sをニューヨークへ呼んだアダムという人がいる、というのを先の両氏から聞いていたので行ってみたのだ。が、彼はLAにいるらしく会えなかった。残念。お店はハードコア・パンクやアンダーグラウンドメタルを基調にしつつ、ニューウェーブ/デスロック、普通のロックやヒップホップ、テクノなんかも置いてあるあたり、昨今のレコード屋事情を反映しているんだろう。こっちの人はいろんなジャンルを横断して聞く人が多いし、かつヒップなエリアだから客はパンクスだけじゃないわけだ。その珍妙さは、DISCHAGEのでかいフラッグが奥に貼ってある店内には(おそらく検盤中なのだろうが)ニック・ドレイクの”Time of No Reply”がかかり、旅先でのニックの柔らかい歌声に癒やされながら私が購ったのは、イザベル・アジャーニ主演、ジェームズ・アイヴォリー監督の1981年の英仏映画『カルテット』のサントラLPと、APOCALYPSE/MINDROTのSplit7インチ(どちらも5ドル)という事実が示していよう。こんな無秩序なレコード屋だが、もっと買いたいものがあったのに、店員からは「ネットの調子が悪くてカード決済できないから、支払いは現金でヨロシク」と言われ、現金の手持ちがない私は困り、それ以上の買い物を中止。まあトイレ貸してくれたからいいか(ニューヨークは公衆トイレやコンビニのトイレがないので、用を足すのも一苦労。どうしても困ったらスタバへGo!だ)。
Material World
あとブッシュウィックの、パンクスが運営する小さなお店が並ぶという”Punk Alley”にも寄ってみたが、”Better Read Than Dead”という素敵な名前の古本屋しかやっていなかった。他の小さなお店はたたんでしまったのか、週末しかやっていないのか。ちなみにこの古本屋はジンやMaximum Rocknrollも置いていたので、パンク人脈の古本屋なのだろう。細長い建物のいいお店。

ブッシュウィックのPunk Alleyはシャッター街に…

ブッシュウィックのPunk Alleyはシャッター街に…


ブルックリンのジェントリフィケーション進行中地域ウィリアムズバーグには、他にもRough Tradeや、老舗のEarwax Recordなんかもあるが、今回はパス。

さて、せっかく旅に出たんだから、ライブのひとつでも見てみたい。その「土地」を知るにはライブを見るのが手っ取り早い。正直言うと最近のニューヨークのバンドは個人的にまったく興味がわかないが、それでもまあライブは見ておきたい。というわけでネットで検索したりレコード屋のフライヤーを見たりしたが、何が起きてるのかいまいちよくわからない。そうこうしてると、Facebookのフィードにこんな(ひどい)フライヤーが出てきた。
Youth Crusher
会場のホームページを見てみると、同日同時刻開始で、こんなライブも載っている。
Sex Prisoner
2つのライブを同時開催? そのFacebookのフライヤーを上げていた友人、コロンビア出身のパンクスで、2012年に韓国で知り合って以来、たまに連絡を取っていたディエゴという奴だが(一時期日本も長く旅行していたので、遊んだことがある人もいるかもしれない)、彼に連絡してみたところ、SPIC(Salir De La Pobreza Induce al Caos)というのが彼が今ニューヨークでやっているバンドらしい。これはちょうどいい。滞在していたブルックリンのとても住みやすそうなエリア、プロスペクトハイツ(ラッキーなことに、滞在の途中でマンハッタンからブルックリンへ滞在先が変わったのだ)から、もうあまりパンクのライブに興味がないakと一緒に少し歩いてGトレインに乗り、Greenpoint Ave.駅まで行く。駅出口からすぐのところにあるBrooklyn Bazaarという会場は、ファンシーなレストラン&バーで、そこにライブができるスペースが3つくらいあるらしい。先のSEX PRISONERのような流行パワーバイオレンス系は、今夜は2階のライブスペースでやり(3月のスケジュールを見たら、DAG NASTY、MORTUARY DRAPEなんかもやるらしい)、聞いたこともないようなDIYパンクバンドは、暗く湿った掃き溜めのような地下でやるわけだ。
ディエゴの「俺たち1番目で20:30からスタートだから」という言に従い、20時過ぎに到着。フライヤーには”All Ages”と書いてあったが、建物に入ると屈強そうなセキュリティがもれなくIDチェック。地下のスペースに行くと、まだほとんど人がいない。このライブの企画者らしいダンというナイスガイがakの友人らしく、しばし話したり、彼がドリンクチケットをくれたのでビールを飲んだりして時間を潰す。ディエゴがようやく現れ、久々に色々と身の上話だが、こいつの英語はすげー速くて聞き取りにくいんだった…。国に帰ったりアメリカに戻って職を得たりと、その後の人生は色々あったらしいが、元気そうで何より。SPICのドラムが来ないのでライブはなかなか始まらず、ようやくスタートしたのが22時半。2時間押しだ。昔アメリカでライブしたときも、時間にルーズなショーはあったが、アメリカで2時間押しは初めてだな。メキシコのティファナでライブしたときに4時間押しというのがあったり、ギリシャではライブが深夜0時に始まったりしたが、まあその土地それぞれの時間感覚というものがあるのでしょう。

SPIC

SPIC


SPICはメンバー全員中南米系の、ちょっとフリーキーなラティーノパンク。ドラムがパワフルでかっこいい。次は地元のRUBBERというバンド。ギターとボーカルが女性で、EL ZINE vol.29に興味深いインタビューが載っていたHARAMのボーカルがベースを弾いていた。ボーカルはグラム/ゴスがかったようなファッションにリバーブ全開の、いかにも今のニューヨーク風なロウパンク。このバンドは人気らしく、今晩一番の人だかり。
RUBBER

RUBBER


次のバンドが、ギリシャはアテネからのツアーバンドのYOUTH CRUSHERで、その名の通りスポーティーなオールドスクール・ハードコア。「俺たちのことなんて誰も知らないけど、こういうバンドもいるんだよ」と、RUBBERが終わって一気に少なくなった客に対して寂しげに語り悲哀を誘う。ラストはΜάτιというギリシャ語のバンド名だが、どうやら在米のグリーク・アメリカンによるバンドらしい。THE ACCUSEDみたいなギターが刻みまくってるスラッシュバンド。
各バンドの音楽より気になったのは、バンド、客を含めたそこにいた人たちの「見た目」だ。RUBBERやその周りは個性的な、いわゆるパンク・アウトしたようなファッションだが、最近のベイエリアのような真っ黒鋲ジャン一辺倒ではなくて、カラフルでもっと各人自由な感じ。小金持ちの親の援助を受け(要は仕送りもらって)ニューヨークやサンフランシスコで活動する若いパンクスもいると聞くし、そういった服もそれなりに金もかかってるのかもしれない。そのまま『マッド・マックス』に出てきそうなプロテクターを装着してたかっこいいバイカー・パンクスもいたな。SPICのメンバーはボロボロな服着てたし、ギリシャのバンドはジーンズに土色ジャケットの労働者的風貌。お客も上記RUBBER系からDC真面目ハードコア系(つまり普通の格好)、カレッジロック風、おしゃれな女性たち(そういえばお客の3割くらいは女性だった)と、それぞれの生活が透けて見えるようなファッションがその地下室に同居していた。そんなところからもニューヨーク・パンク内の階級性が見えるのかもしれない。
ライブが終わったのが0時半。外に出るとあまりに寒い。強い風が顔を切るような冷たさで、駅から歩いて帰れる気温じゃない。一応24時間走っている地下鉄は諦め、タクシーで帰る。労組もなく、ドライバーの実質的最賃も下手すりゃ時給3ドルというUberはやめておこう。

「ニューヨークのハードコア・パンク」と言えば、「名所」が色々あるが、マンハッタン滞在中のある晴れた日に、散歩がてらイースト・ビレッジに向かった。1988年の8月6日~7日に暴動があったトンプキンス・スクエア・パークを見ておくためだ。この暴動は、その公園に住んでいたホームレスやスクワッターたちが、地域の治安悪化やジェントリフィケーションを理由に警察に排除され起きた暴動で、Youtubeには、その暴動の1週間後にNAUSEAやBREAKDOWNなど、当時のニューヨークのバンドが同公園でライブを行った動画が上がっている。その後も毎年のように、この暴動を忘れないようにと、ライブが行われているみたいだ。暴動記念で毎年ライブなんて素敵じゃないか。
当時の公園の様子は文献でも当たらない限り、ネット上の情報以外に知る由もないが、今の公園はきれいなもので、北の一角にはドッグランのようなものすらあって地元民の憩いの場のようだった。ホームレスの人なんかひとりもいない。まあ似たようなことは日本でも起きていて、たとえば愛知万博開催のために、2005年の1月24日に、名古屋の白川公園の野宿者が行政代執行で排除された現場や、最近だと2020年のオリンピックのために行政が野宿者を明治公園などから追い出す光景と地続きなわけだ。

トンプキンス・スクエア・パーク

トンプキンス・スクエア・パーク


トンプキンス・スクエア・パークから東へ1ブロック行くと、元C-Squatの建物がある。現在は”Museum of Reclaimed Urban Space(MoRUS)”という、上記暴動やニューヨークのスクワット文化の資料館みたいな施設になっているらしい。せっかくなのでお金を払ってでも入ってみようと思い、11時オープンということで11時半くらいに行ったんだが、開いておらず。
そこから南へ歩くとロウアーイーストサイドに入り、ジン図書館やギャラリー、Food not Bombsなどのコレクティブの中心地で、ハードコア・パンクや地下メタルのライブが数多く行われてきた著名な施設・ABC No Rioがあるのだが、行ってみたら、何と建物がない! ホームページを見ると、老朽化によりビルを建て替え中、再びソーシャルセンターのような機能を持たせる施設にするということで、カンパも受け付けているみたい。しかし相当金がかかりそう。
あと最後にこれを載せておこう。現在のCBGB跡だ。
CBGB
2008年より、ジョン・ヴァルヴェイトスというデザイナーのファンシーな服を売るブティックがテナントとして入っている。壁には当時のフライヤーやレコードなどが申し訳程度に残されているらしいが、店に入る気も起こらない。
このように、ニューヨーク・ハードコア・パンクの「過去」は表面的には消えつつあるのかもしれないが、その街のごとく入れ替わり激しくパンクスがうごめき、様々な活動が行われる中で、バンドや人、組織のあり方も変わっていくのだろう。その変化のスピードがおそらくニューヨークはとても早い。

超駆け足で書いた今回の雑文だが、次号後編では、今回何度も出てきた「ジェントリフィケーション」という言葉を噛み砕きながら、1967年にある米保守学者が言った、「世界で一番長い旅路は、ブルックリンからマンハッタンへの旅路である」という言葉の現在を考えたい。(つづく)

13. June 2018 by sats
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ニューヨークの古本屋 〈2018年3月編〉

もう1ヶ月以上経ってしまって、記憶も曖昧になりつつあるが、3月にニューヨークに行った際に訪れた古書店をまとめておく。
このブログ、一応パンクス向けの記事が多いし、もちろんパンクスが読むであろうと想定して書いてるつもりなんだが、前にも書いたように、検索でここにやってくるので1番多いのは、イスラエルの入出国の記事。あとはエルサレムの古書店とか、那覇の古書店など、ある種実用的な記事しか読まれてない(最近google analyticsがちゃんと動いていないので、検索の内訳がわかんなくて困ってるんだけど。T君(このブログのサーバの持ち主)、何とかして!)っぽいので、まあニューヨークのについても書いておこうと。

ただニューヨークは、ジェントリフィケーションなどもあって家賃は高騰、ヒップな地域がどんどん移り変わったりするせいで、店の移り変わりも早そうなので、以下の店がいつまであるかは知らないし、同じ場所でも経営者が変わって名前を変えるとか、いろんなことは想定されるので、ググってここにたどり着いたひとは最新の情報をチェックしてください。

傾向としては、やはりブロードウェイや映画・テレビ産業などの中心地でもあるからなのか、どの店もフィクションや演劇、詩の本の取り扱いが多いのと、店内で朗読会などのイベントをやってるところも多そうだった。

〈マンハッタン〉

Strand Bookstore
Strand bookstore
ニューヨークの老舗大型古書店。新本も売ってる。店の外の「エサ箱」的1ドル本がかなり充実してるとakが言ってたので行ってみたが、エサ箱にはえらい人だかりで、おまけにメチャクチャ寒いのでササっと見て店内へ。4フロアあるのか、とにかく在庫は多い。新本の面陳のように、同じ古書を10冊も積んで売ってるって、商品の回転が早くないとなかなかできないよな。こっちの人は新刊本は読んだら値が高いうちに古書店に売っ払うんだろうか。
地下には最近猛烈に流行ってるらしいタロットやオカルトのコーナーがあって、そこにお香の一つとして毎日香が売ってたが、向こうの毎日香には何かウーウー的意味があるんだろうか。
ここでは文庫版みたいな扱いの、Bantam Classics版のシャーロット・ブロンテの“Villette”を新本で購入。5.35ドル。新本でも10%オフ。でもニューヨークはSales Tax(消費税みたいなの)が8.875%と高いのであった。
住所:828 Broadway, New York
https://www.strandbooks.com/

Mercer Books & Records
Mercer st. bookstore
グリニッチヴィレッジのニューヨーク大学一帯の南側ら辺にある、オールドスクールな古本屋。後からブルックリンのきれい目な古本屋にいくつか行って思ったが、こういった古くて雑然として、カテゴリも適当に分けてある古本屋の方が、古本屋然としていて、何かと出会える感が高いし、値段も安いし、お店は爺さんひとりでやってるぽくて好感が持てる。こっちは古本屋に限らず、どこでも何でも大体カード決済が可能で楽だが、そのカード読み取りも、最近多くのお店が使ってるらしい「Square」というカード決済アプリ(iPadなんかにリーダー(端末)をつけて、それでカードを読み取って、レシートはメールで受け取る。便利は便利なんだけど)だとあまりにモダンすぎて味気ないので、やっぱり調子の悪いカードマシーンがあって、カードを何回もスライドさせて、汚いボタンで暗証番号打つ方がいいよね。まあ単にそういったヒップな決済システムがちょっと嫌なだけなんだけど。
さて、この店はレコードもちょっと売ってて、リチャード・プライヤーが自分で撮った自伝映画『ジョ・ジョ・ダンサー』のサントラが売ってたので購入。6ドルだったか。
ホームページを見ると、もう25年もやってるのね。この25年でこの地域の家賃はどれくらい上がったんだろう。
住所:206 Mercer St, New York
http://www.mercerstreetbooks.com/

Codex
Codex
ここは下記ブルックリンのBook Thug Nationの関連店なのか、そのSquare経由で受け取ったレシートの差出人がBTNだった。
いかにも最近風な、オシャレでスッキリした店内に、フィクションやアート系の本がたくさん陳列してある。地面に本を置く、なんていう、日本の古本屋じゃ当たり前過ぎて何も思わないようなことは行われておらず(笑)、きれいすぎてこちらが恐縮するくらいだ。隣のカフェとは店内で繋がってるのもオシャレポイントが高い(私的にはマイナスポイントだが)。
シャーリイ・ジャクスンの“Raising Demons”(『野蛮人との生活』(ハヤカワ文庫)は冷徹な観察眼で家族を見るノンフィクションで、小説以上にすげー面白いから、これも邦訳出たらいいのに)と、チャールズ・ウィリアムズの“War in Heaven”を購入。さて、ちゃんと読めるだろうか…。そういやどっちも国書刊行会の「ドーキーアーカイヴ」に入ってる作家だな。『ライオンの場所』早く読みたいよ。
住所:1 Bleecker St, New York
http://codexbooks.info/

BOOKOFF 49 W 45th NY
昔パリのブックオフに行ったら、結構いろんな物があって(以前書いたが、早逝した詩人の安川奈緒氏に宛てた雑誌の献本なんかも売っていた)、ちょっと期待して行ったんだが、汚いDVDがたくさんと、楽器やPC機器のようなハードオフ扱いの製品、あとアメリカのアニメオタク向けなのか、そういった関係のものが多くて、特に目ぼしいものもなし。がっかりしたから写真撮るのも忘れちゃったよ。
住所:49 West 45th Street New York

〈ブルックリン〉

Book Thug Nation
bookthugnation
ここはブルックリンのジェントリフィケーション中心エリア、ウィリアムズバーグにある。メトロだとLトレインのBedford Ave駅が最寄り。
ここも綺麗な古書店で、いかにもと言ったら失礼だが、ジェントリファイドされた後にできました、という感じはする。地面に本を置かないのは、先述のCodexと同じ系列だから、きっとここのポリシーなんだろう。地面を這うようにして、何かよくわからないけどひたすら本を探す行為というのも好きなんだが、それはおあずけというか、そういうことをさせない雰囲気のお店。
コミュニティ・スペースとも書いてあったので、集会やイベントも行われているようだ。今回ウィリアムズバーグにはここ以外行かなかったので、何がどれくらい「高級化」してるかはよくわからないのだが、ブルックリンの中でも何か「きれい」だな、というのは少し道を歩けばわかる。イーストリバー沿いには変なデザインのハイライズが立ち並び、もう南千住駅の東側みたいになっている(地価はまったく比較できないだろうが)。そういえば駅からここまでの間に、きれいな店構えのアート専門の書店があった。そっちにはお客さんもたくさんいた。
さて、このサグな店では、ジョン・ウォーターズの自伝“Role Models”を安く購入。あとDaniel Makagonという人の、アメリカのアンダーグラウンド・パンクの本も買った。90年代の話かと思ってよく見ずに買ったんだが、2015年出版でわりと新し目のバンドのことも載っている。
住所:100 N 3rd St, Brooklyn, NY
http://www.bookthugnation.com/

Better Read Than Dead
better read than dead bushwick
ここは、EL ZINE編集Y氏に教えてもらった、ブッシュウィックの「パンク小道」を目当てに行ったんだが、平日の昼間に行ったからなのか、もう今はそこは何もないのか知らないが、このお店しかやっていなかった。細長い形の店舗で、外のエサ箱にはSFのペーパーバック(ひたすらアシモフとか)と、文字通りの箱には色あせたMaximum Rocknrollの90年代のバックナンバーが1冊2ドルで売っている。ちょっと期待しながら中へ入ったら、今のMRRも売ってたので、パンク小道にあるパンク人脈の本屋なのだろう。店員のあんちゃんは真面目そうな人だ。狭い店内はほとんどフィクションと詩の本だけ。ここではトマス・ディッシュの未邦訳の長編のハードカバー1冊と、スターリンのインタビューが載ってるMRRの92年10月号を購入。ディッシュたくさんあったな。あとセリーヌもたくさんあった。ニューヨークの古本屋にはセリーヌが多い! というのは今回気付いたことのひとつ。アメリカではどこまで発禁になっているか知らないが、日本で文庫本で出てる代表作2作に加え、『北』、『城から城』、“London Bridge”は結構よく見かけた。
しかしこんな狭い店で、必然的に在庫もそんなに置く場所もなく、これでやっていけるのだろうかとちょっと心配にもなる。「どう? やっていけてるかい?」と聞くわけにもいかんしねぇ。もっと買えたらよかったんだが、本は重いからねぇ。

これがその「パンク小道」の現在。左手がその本屋。ね、何もやってないでしょ。

これがその「パンク小道」の現在。左手前がその本屋。ね、何もやってないでしょ。


住所:867 Broadway, Brooklyn

Human Relations
Human relations bushwick
上のBetter Read Than Deadのあんちゃんに、この辺に他に古本屋はある?と聞いたら教えてくれたのがこのお店。実はその前に行っていたレコード屋、Material Worldの対面にあるのだった。ブッシュウィックの建設中の大型マンションを見ながら、Flushing Aveを往復したことになる。ちょっと疲れたな。
ここはわりと大きめの店で、フィクション以外にもコミックやアートの本、ニューヨークではもう珍しくすら感じる、大きめのノンフィクションのコーナーもあった。Material Worldで買ったレコードが入った赤い袋を持ってると、素敵な笑顔の店員のおじさんが「何買ったの?見せてよ」と話しかけてきたので仕方なく見せたところ、「へー、知らないなあ」という不毛な会話をしたあと、あのレコード屋いいよね、俺も昨日行ったんだよ、これ買ったんだ、聞く? と会話が続く。やぱりMaterial Worldはメタル、パンク向けだけのレコード屋じゃないんだな(このあたりはEL ZINE vol.30の拙稿「ニューヨーク2018」を参照いただきたい)。
というわけで、気さくな店員のおじさんがいて、お客さんも結構たくさんいて繁盛してそうなこのお店では、オクタヴィア・バトラーの長編などを購入。ここもSquareで決済。
住所:1067 Flushing Ave, Brooklyn
http://www.humanrelationsbooks.com/

Unnameable Books
(写真撮るの忘れた)
ブルックリンで数日滞在させてもらった、akの友人の家からほど近いところにあったプロスペクトハイツのど真ん中のお店。このあたり、子供向けの本専門店、ってのがいくつかあるようで、このお店にも絵本がたくさん置いてあったので、子育てファミリーが多いエリアなのかな。
ここはフィクションは他のお店よりは少なめ、子供用の本の他にも、「LGBT」の棚、Black Studiesの棚などもあり、多分古くからやってるお店なんだろう。ここに来て、新しいお店=フィクションの割合が多い、ということが段々わかってきたぞ。現にここのカード決済は、Squareじゃなくてちゃんとしたカードリーダーでボタン押すタイプだった。私の好きな類の古本屋だ。
ここではBrian Evensonの長編1冊などを購入。Brian Evensonは結構な多作の作家だが、いつも洋書で買ったやつを読み切らないうちに、それの邦訳が出る。私の選択が悪いのだろうか、センスがいいのだろうか、短編集だからだろうか、それは知らない。で、邦訳が出ると洋書を読むのが億劫になり、でも邦訳を買うのも何だかもったいないので、結局読み進められない、というジレンマに陥るが、今回は邦訳出る前に読み終えられるのだろうか。
あとクラスナホルカイ・ラースローの、わりと最近英訳が出たらしい“Seiobo There Below”を買おうか迷ったが、中をチラ見すると、相変わらず改行がなく文章が延々と続いているので、こんなの読むのに何年かかるんだと思い諦めた。英訳からの重訳でいいので、誰か邦訳してください! 他の作品もね! 『北は山、南は湖…』(松籟社)はそんなに面白くないんだよな…。
住所:600 Vanderbilt Ave, Brooklyn
http://unnameablebooks.blogspot.jp/

というわけでブックオフも入れて8店。しかし、重要なことは、買った本はちゃんと読まないと、ということだ…。
レコードに比べて本は単価がかなり安いので、Better Read Than Deadのように、やっていけてるのか心配になるお店もあるが、まあこればかりは仕方ない。特にニューヨークでやるなんて相当に大変なのは覚悟の上でやってるんだろう。日本でも最近はブックカフェとか、古書店で朗読や弾き語りイベントなんかをやってるところもあるが、そうやってコミュニティの中で活用される場としても、古本屋を機能させているようだし。ただ本を売る、というのはもうネットで事足りてしまうから、それ以上の何か、“Human Relations”という名を冠したお店が示すように、人と人をつなげる場に、古本屋の意義も変わってきているのかもしれない。今までインフォショップが担ってきたことを、古本屋もやるようになったということか。そういや今回は古本屋に気を取られて、インフォショップとか、ラディカル本屋的なところには行かなかったな。以前サンフランシスコにはあったが、ラディカル本屋がやってる古本屋ってのもニューヨークにはなさそうだった。

24. April 2018 by sats
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EL ZINE vol.30 -SEX MESSIAH インタビュー/ ニューヨーク2018〈前編〉

EL ZINE vol.30は4月27日発売です。

今回は、大阪のブラックメタルバンド、SEX MESSIAHの首謀者で、その他も色々な音楽活動をされているMOENOS氏にインタビューしました。
パンクス視点で、「ブラックメタル」への疑問なども思い切って聞いてみましたが、氏の音楽に対する真摯な姿勢がそのまま回答に出ている、パンクスにとってもメタルヘッズにとっても読み応え十分の内容だと思います。またこういったアンダーグラウンドのシーンで「女性がバンドをやること」についても、ズバっと言い切ってもらってるので、ぜひご一読を。
↓の昨年のブラジルツアーの話もあり!

Better read than dead
あと今号にはもうひとつ寄稿してまして、先月半ばに行ってきたニューヨークの、ハードコア・パンク関連のことについての紀行文(の前半)を載せてもらっています。名付けて「ニューヨーク2018」…、記事タイトルのデザインも、ジョン・カーペンターのあれから拝借してもらったので、安直なタイトルですがご勘弁ください(笑)。
前編はとりあえず、ニューヨークのレコード屋のことや見たライブのこと、ニューヨーク・ハードコア・パンク的「名所」の現在などについて書いてます。vol.31に掲載予定の後編は、ニューヨークの「歴史ある」ジェントリフィケーションのことなどが主に載ります。
記事中に登場するバンドや施設などのリンクをここに貼っておくので、興味があればどうぞ。

↓のライブに行ったのでした。
show 0316
SPIC

RUBBER

YOUTH CRUSHER(ギリシャ)

Μάτι

The Museum of reclaimed Urban space (元C-Squat)
http://www.morusnyc.org/

ABC No Rio(再建中)
http://www.abcnorio.org/

元CBGBの場所にある高級服屋…
https://www.johnvarvatos.com/storedetails?StoreID=3008


ez30
EL ZINE / vol.30

●SKITKLASS
(2017年に突如として日本のハードコア・パンク・シーンに登場し、立て続けにリリースされた音源はいずれも即完売。正体不明の覆面バンド、SKITKLASSのヴォーカリストであるSkitkatt氏へのインタヴュー)

●OBEDIENCIA
(ロンドンのLa Vida Es Un Musからのアルバム・リリースも記憶に新しい、スペインはマドリッドの女性ヴォーカル・パンク・ロック・バンド、OBEDIENCIAへのインタヴュー)

●SOLVENT COBALT
(ex.ISTERISMOのSatoshi氏が率いる新バンド、SOLVENT COBALTへのインタヴューby Shogo氏/GREAT DANCE,ALTERNATIVE SOLUTION)

●Umea Punk City
(ex.AC4~現ACID BLOODのKarlによる、スウェーデンUmeaの現地情報コラム)

●Moenos from SEX MESSIAH
(大阪のブラック・メタル・バンドSEX MESSIAHのMoenos氏へのインタヴューby鈴木智士氏)

●SOW THREAT
(1stフル・アルバムのリリースを控える沖縄のステンチ・クラスト・バンド、SOW THREATのベース・ヴォーカルであるハチマン氏へのインタヴュー)

●沖縄バンド紹介
(沖縄で現在活動中の5バンド[ALKSLK、BIRDHELMS、疾shitva刃、offseason、R.A.G.S]へのミニ・インタヴュー)

●チヒロンfrom黄金狂時代
(東京のパンク・ロック・バンド、黄金狂時代のベーシストであるチヒロン氏へのインタヴューbyツトム氏/悲観レーベル)

●高松ハードコア特集
(・80年代の香川県高松市にCHAOS UKやJohnny Thundersなどを招聘し、様々なイヴェントを企画していた堀地氏と、ex.EFFIGY~AXEWIELDにして現在はULCERで活動中の増田氏による、高松の80年代についての対談。
・OFF-ENDの荒木氏、AKKA~DEMESNEのハナ氏、UNGODLYのガイ氏、IMPULSE RECORDS etcの井川氏による現在~未来の高松についての対談。
・高松で活動中の20バンドを紹介するテキスト)

●OHYDA
(ex.ALERT! ALERT!~KNIFE IN THE LEGのメンバーらによるポーランドのハードコア・バンド、OHYDAへのインタヴュー)

●LASHING SPEED DEMONS:MOTORHEAD/Fast Eddie Clarke Era
(2018年1月10日に亡くなったFast Eddie Clarkeが在籍していた、1976~82年までの”黄金トリオ”期のMOTORHEADについてby 大越よしはる氏)

●ASCO
(ブラジルはサントスのハードコア・バンド、ASCOへのインタヴューby Rafael Yaekashi)

●ニューヨーク2018
(2018年3月にニューヨークを旅してきた鈴木智士氏による紀行文、その前編)

●ES GIBT KEIN WERT
(発行人によるディスク紹介)

●チャレンジ・インタヴュー
(EFU氏[FAST aka FAST zine])

14. April 2018 by sats
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“March for Our Lives” 私感

3月24日に、全米で銃規制の強化を訴える“March for Our Lives”と称するデモがあった。これは2月にフロリダ州のパークランドの高校で起きた銃乱射事件(17人が死亡)に端を発し、同校の高校生たちが主導で始めたものだ。スローガンはDischargeよろしく“#NeverAgain”。それに共鳴して、アメリカ国内だけでなく、国外主要都市でも抗議行動があったらしい(日本はあったのかな)。

ちょうどその頃、アジア研究者の学会がワシントンDCで行われていて、その端の端にかろうじて引っかかっている相方akがDCに行くのがちょうど24日だったので、デモもついでに見に行こうということになり、私も早朝からついて行った。ちなみに発表者には、日本のパンクスにもおなじみ625マックスもいて、ロシア革命の日本への影響、みたいなことを発表していた。まあ日本にもよく来てるけど、元気そうでした。

昼頃から地下鉄に乗ってDCのダウンタウンへ向かった。地下鉄がラッシュ時の東京みたいになってて既にすごい人。DCまで来て満員電車を体験するとは思いもしなかった。みな様々なプラカードを持っている。駅を上がると、今日のデモのためにわざわざ刷ったと思われるTシャツを売っている人がそこら中にいる。アメリカの首都であるDCには数十万人集まると言われていたから、それを見込んで一儲けしようというわけだろうか。1人の老女が100枚はあろうかというTシャツの山を前にして座っていたが、あんなに刷って売れ残らんのかな、というアンダーグラウンド・バンド的視点で心配する…。
ダウンタウンに着いても、デモというかこの集会はあまりに人が多すぎて、車の通行を規制したストリートはどこも人だらけ。おびただしい数の簡易トイレも用意されたとてもでかい規模の集会だ。我々はスピーチ会場までは到底たどり着けるわけもなく、種々のプラカードを見ながらただの観察者と化していただけだった。参加者は50万人とも80万人とも言われていたようだ。ちなみにこの件についての日本の報道は、「セレブも参加」「アリアナ・グランデが歌った」「ニューヨークではポール・マッカートニーが参加」みたいなのが目立ったが、さすが日本のメディア!と言うしかないな…。
dc2
さて、結論から言ってしまえば、今日のデモは「リベラル」主導の「平和的」なものなので、参加者も全米から高校生が集まったりと年齢層はかなり若く、2017年1月のトランプの大統領就任式のような、ブラック・ブロックがリムジンや大銀行をぶち壊したり、リチャード・スペンサーのような白人至上主義者をぶん殴る、みたいなものはもちろん見られなかった。ブラック・ブロックなんかおそらく興味も持たない類のやつだ。
ただ、これだけでかい集会でも警察の姿はほとんど見られず、いても所々にパトカーが止まっていたり、道案内に答えている警官がいるだけ。あとは完全に放任。デモをやるのに警察がそれを制する、というのは「ありえない」ことなのだ。ただまあブラック・ブロックみたいなのが登場したら大急ぎで飛んでいく態勢は整ってるんだろうが…。
これだけ多数の人々が参加していることは単純にすごいことだとは思う。就任式反対やウィメンズ・マーチなど、特にトランプ政権になってから、こういった大規模なデモや集会に多くの人が集まるようになったとは思うが、自分の意志を示すのに躊躇しない。引率っぽい先生のような人もいたからクラスみんなで来たのかもしれないが、小学生、中学生と思わしき若い10代の姿も多い。男の子も女の子もいる(大人は女性が多かった気がするが、ヒラリー支持者のような「リベラル」の集会だからなのか、銃規制が目的だからなのか…)。ネットでは銃規制反対派が立ち上がった人たちのことを「フェイクニュース」呼ばわりしたり、若者たちはハラスメントにさらされたりもしたようだが、それでもこうやって街頭に出て自分の考えを表現するのが当たり前なのだ。またこっちのプラカード(サイン)は「デモで自己表現」のごとく、手作りのものが多くて、それを見てるのは面白かった。今回はやはりNRA(全米ライフル教会)を批判するものや、日本でもその「沈黙スピーチ」がメディアに取り上げられていたようだが、先の銃乱射事件を生き伸びたエマ・ゴンザレスさんを支持するもの、子どもたちを守れ、というものがほとんど(このあたりのサイトで、そういったサインが色々見える)だったが、その中で社会主義者や労組が下記のようなチラシを配っていたりもした(日本の「国会前」ならこの人達は排除されるのかな)。
workers
ふざけたようなサインはなく、それくらい真剣なんだなというのはわかった。“Am I Next?”(次は私が撃たれる番?)というサインもあったが、それを見て、90年代にNATOがセルビアを空爆していたときに、「ターゲットはここだよ」と射的マークのTシャツを着てNATOを挑発したセルビア人たちを思い出したりもした。もっともあれは相手がもっと強大だったが。

ただ、akとも話していたのだが、気になったのは、“Black Lives Matter”運動のような、ここ数年の警察官による黒人銃殺に対する運動に関するプラカードが少なかったこと。聞いたのは、銃規制運動が「シングルイシュー化」することで、警官による黒人、有色人種への暴力が埋もれてしまっているということだ。まあ「シングルイシュー」や「リベラル」にありがちなことかもしれないが。たとえば児童生徒を守るために、警官を学校に配置する。警官が銃を持つのはとがめられない。何かあれば(何もなくてもか)その警官が黒人を疑い、銃を向ける、ということも起きかねないのだ。

デモのメインストリートとなっていたペンシルバニア・アヴェニューの、FBI本部のある角のところに、デモに反対する「カウンター」、すなわち銃規制に反対する集団もいた(もちろん星条旗付き)。
NRAは「銃が増えれば国はより安全になる」という考えのもとで動いており、あらゆる銃の規制に反対し、共和党の議員に莫大な献金をしているのは報道で取り上げられる通り。これらの「カウンター」の人々の持つサインも、「銃を持った方が長生きできる」とか「アメリカの自由は『敵』じゃない」(銃を持つ「権利」自体が、アメリカの「自由」を体現している、というわけだ)など、あからさまに攻撃的なメッセージではないが、銃を持つ自由も認めろ、というメッセージを放っていた。その集団の回りには警官が何人かいたが、その集団に寄っていって議論をしている銃規制派の人たちもいた。

銃規制反対派とそれを囲む銃規制派

銃規制反対派とそれを囲む銃規制派

いくら学校での銃乱射による死者数が、アメリカでの銃による犠牲者全体の数パーセントだとしても、無関係の子どもたちが学校という場所でいつ殺されるか怯えながら生活を送るのは何とも辛い。でもそこはアメリカ社会。「だったら先生が銃で武装すればいい」とトランプが言ったり、先に書いたように警官を配備すればいい、という、あくまで銃の存在を根底に置いた、力でねじ伏せるような考えも出てくる。銃規制派と反対派の溝は、まるでそれぞれが別の世界にいるようで、埋まるようにはまったく思えない。一つでかいデモを見たからといって何かがわかるわけでもないが、銃社会アメリカがどうなるか、ひいては今後、銃が社会にとってどのような位置づけになるのかも、気にはなる。別に現実と非現実を混同しているわけではないが、それは現実世界ではない映画やゲームなど表現の領域においてもそう。それらの娯楽で、銃を散々見ているのも確かだ。先にNATOのことも触れたが、アメリカが国防の元に行う「悪」に対する「戦争」も、この銃社会の延長線上にある気もする。先にやっちまえば殺されることはない。備えあれば憂いなしの究極版とでも言うか。そう考えるとアメリカという国は本当に歪んでるな。こんなところに引っ越して住める気はなかなかしない。パンクスでも銃を持っていることを自慢げに語る人もいたが(某ハボック先生とか)、ああいう人たちは今何を思うんだろうか。

07. April 2018 by sats
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